ようこの移住なんでも相談室① ~Iターンの極意 地方移住は「日本語の通じる外国へ行く」と思え!?~

コロナ下、オンラインの移住相談が当たり前になるなど、手法の変化に加え、移住希望者(相談者)の相談内容などにも変化を感じているという相談員も多いのではないでしょうか。「仕事がないと移住できない」、「いい物件があれば移住したい」など地方移住の障壁となっていた住まいや仕事に関してもリモートワークが可能な「転職なき移住者」や、生活に便利な地方都市へ移住して、その後徐々に郊外へと移り住む「二段階移住」など移住スタイルも多様化。

40年以上移住に携わり、移住者のサポートを続けている徳島県移住アドバイザーの小林陽子さんも、この1年の急激な変化に驚いているといいます。小林さんと共に2022年度を振り返り、地方移住最前線を紹介します!

2023年1月14日、15日の2日間にわたり東京ビッグサイトで行われた『JOIN移住・交流地域おこしフェア2023』の様子。

 

――最近の移住の傾向として、UターンよりもIターンが多くなっているようです。

そうそう。移住相談を受けてて、出身地を聞いた時に30代、40代でも東京出身の人が増えているとつくづく思います。地方から東京へ行った子が「移住しよう」って思ってないな、と。もともと都会育ちっていう子の相談がめちゃくちゃ増えてるから、「田舎のこと、知ってる?」とか「知らんの?」とかいうレベルじゃなくて、地方移住は「日本語の通じる外国」へ行くつもりで考えてもらわんとアカンと感じています。

――外国ですか!?

いや、ホンマよ。最初は「田舎の紹介してあげたらエエんちゃうかな?」と思ったりしたんよ。だけどそのレベルじゃないね。例えば県南の海側の温暖なところだったら東南アジアのビーチ系、県西部の山の方だったらヒマラヤ、チベット・・・と言ってあげる方がいいな、と。同じ日本と思わずに、「日本語の通じる外国やと思って来てください」って説明するようにしています。

――東京生まれ、東京育ちでIターン希望という人にとって、田舎のイメージは漠然としているのかもしれないですね。

対面での移住相談で目の前に座られた方にはまず、徳島の地図を拡げて「どのくらいの田舎までがOKですか?」ってお尋ねするようにしています。四国の右下でいえば、イオン系の大型スーパー、ニトリ、ユニクロ、マクドナルドがあるのは阿南市まで。それより先は阿南市まで車でどのくらいかをお話してますね。「美波町なら車で30分。阿南市でお仕事されて、美波町でお住まいになってる方も多いです。通勤圏内です」って。そういう具体例を挙げて説明しないとピンとこないみたい。

――小林さんは以前、移住の極意として「一年間は静かに暮らす」ことを推奨されていましたが、比較的街の方でもそうでしょうか?

「静かに暮らす」というか、やっぱり「地域に馴染む」時間がいると思うんですよ。最近、特に気をつけないといけないと思うのが方言。移住に失敗するケースで「移住者とコミュニケーションがとれない」、「移住者がトラブルを起こす」って、アレ。言葉が通じてないと思うんですよ。徳島(阿波弁)も関西弁みたいに聞こえるけど、全然違うからね。

移住アドバイザー直伝!移住成功の極意

――確かに。

それから方言の問題ともちょっと違うんやけど、今、移住してきた人と一緒に空き家の改修をしてて、「ネコ(車)持ってきて!」って言ったらポカンとするんよ。「猫ですか?」って。「一輪車よ!」っていうと、曲芸で使う一輪車と思うみたいで、話が噛み合わんの。他にも「テミ、買っといて」って言っても、“テミ”が分からない。

手箕(テミ)・・・落ち葉などのごみ集めの際に使用する農具

――都会で住んでたら使うことのない道具ですからね。

私らが何気なく使っている言葉でも、移住者には全然通じていないことってあるんちゃうかな。「それ、何ですか?」って聞いてくれたらいいけど、なんとなく聞き流して分からんままにしていると、気がついたら溝が広がっているってことがあると思います。

 

――その誤解が「田舎で阻害された」とか、「仲間外れにされる」と言われる原因かも知れませんね。
私はいつも言うんです。「無理することないよ」って。地域の人に会ったらニコニコして、ご挨拶をちゃんとして「まだ慣れてないんで」とか、「慣れてないからもうちょっと待ってください」とキチッと言うようにしてって。移住してきたばかりの田舎初心者は、運転免許とりたての人が初心者マークをつけているみたいに、町に慣れてないことを周りの人に知ってもらう方が暮らしやすい。

ポイントは、そのことを「その地域の誰に言えば、ちゃんとみんなに伝えてくれるか」。それさえ覚えればスムーズにいきますよ。この間も移住初心者が「消防団に誘われて、ちょっと迷ってる」っていうから、「まだ来て1年目。迷ってるんだったらやめなさい」ってアドバイスしました。「町外に勤めに行ってるので、今はちょっと入れないです」と断って、ある程度慣れてきて「入ろうかな」と思った時に入ったら?って。

↑消防団出初式の様子。

――サラリーマンだと土日も仕事だったり、子育て世代は学校行事などもあって、町内のイベントごとに参加できないこともあります。それをプレッシャーに思うことはないってことですね。
全然ない。今、コロナで町内会や寄り合いが減ったんですよね。口には出さんけど、住んでる人も楽になったっていう感覚がありますよ。今までやめれんかったことが「コロナだからやめよう」という雰囲気も手伝って、時代に合ったカタチに変ろうとしている。そのおかげで他所から来られる人も少し楽になったと思います。

――一方でお祭りが中止になったりして、地域のコミュニティに入るきっかけをなくしたという人もいるのでは?
コロナで中止になるのは2、3年のことなんで、地域に慣れる期間があったと思えば、ちょうどいいんちゃう? お祭りが復活したときは来たすぐより、入りやすいと思いますよ。ただ地域に溶け込むのが上手な人は祭りとか大きな行事より、溝掃除やら分別収集やら、そういう普段の小さな共同作業をスイスイッとこなしてますね。気が利くというか、そういうところに気負いなく参加できるタイプの人は地域に馴染みやすい。それがやりにくい人は伝えといた方がいいね。「ちょっと苦手なんです」って。それも人それぞれやからね

↑日和佐八幡神社の秋祭りは一般社団法人地域活性化センターが日本各地で地域の個性を活かしたユニークなイベントの中でも特に優れたものを表彰する「第21回ふるさとイベント大賞 ふるさとキラリ賞」を受賞したこともある。

――方言のことも含め、田舎がある人はIターンよりUターンの方がいいんですかね?

うーん・・・。自分の地元が好きでない子っておるんですよ、やっぱり。ちっちゃい時にイヤな思い出があるとか、学校も嫌だったとかいう人はムリに帰らなくてもいいと思います。Uターンしたいけど親や親戚のしがらみがあってストレスになるようなら車で1時間の近隣の町に住むとか、全然違い地域だけど元風景と似た場所を探すとか、実際に行ってみて自分が「いいな」と思う場所へ移住するんが一番いいと思います。

 

――参考になりました。ありがとうございました!