子育てしながら働きたい!ICTを活用した注目の在宅ワーク

全国屈指の光ブロードバンド環境による優れた情報通信網が整備されている徳島県。これによりIT関連の企業が次々とサテライトオフィスを開所。自然豊かな環境下で仕事ができると、都会の若者が徳島へ来るきっかけになりました。この流れを地域活性化につなげようと四国の右下エリアでも誘致活動が行われていますが、このメリットは一部IT関連の企業だけのものではありません。実は、フツーの主婦にとっても活躍のチャンスに!子育てや介護のため、外で働くことはできない女性を中心に、ICTを活用した在宅ワークを行うNPO法人『エランヴィタル』を結成。人材育成にも力を入れ、地域に新たな雇用を生みだしています。2018年12月には阿南市在住のメンバーによる地域密着の情報サイト『makemake阿南(まけまけあなん)』も開設し、限られた条件の中でもいきいきと働き、自分の可能性にチャレンジし続けています。「元始、女性は太陽であった」という平塚らいてうの言葉を彷彿させる、明るくたくましい彼女たちが取り組む新しい働き方について、代表の伊勢由花さんにお話を伺いました。

 

楽しみ、学び、成長したいと願う女性達が見つけたICTの活用法

―――“エランヴィタル”って聞き慣れない言葉ですが、何語ですか?

伊勢さん “エランヴィタル”とは、哲学者アンリ・ベルグソンが提唱した進化論の「生物は内的衝動によって成長・進化をする」という意味のフランス語です。女性が元々持っている能力、エネルギーに自分達で気付き、それを発揮することで成長し、社会全体が豊かになって欲しいとの思いから名付けました。

―――壮大なイメージですね!

伊勢さん 『NPO法人チルドリン』をご存じですか? 子育て時期にもっと「楽しみ、学び、納得し、安心したい」という母親達を支援する全国組織で、徳島にも『NPO法人チルドリン徳島』という支部があるんです。「ママまつり」というネイルやベビーマッサージ、ハンドメイド雑貨の販売など母親達の特技を活かして行うイベントの企画運営を通じて、活躍の場を提供し、徳島での活動を全国に発信しているんですが、私たちもそのメンバー。『チルドリン』で活動する中で、メンバーが抱える子育てや介護などそれぞれの事情に寄り添うためには、もう少しコンパクトなコミュニティが活動しやすいんじゃないかと思い、阿南市在住メンバーを中心に平成30年3月12日に新法人を立ち上げ、独立しました。

―――阿南市というエリアに特化したメンバー構成にすることで、地域に密着した活動ができますね。

伊勢さん まさにそれをやりたいと思って。『エランヴィタル』のロゴの3つの円には、3種類の意味があります。1つ目は、阿南の人・海・太陽。2つ目は、1人の女性が段々と成長していく姿。3つ目は、女性・地域のお店や企業・人の集まりを表すコミュニティです。

―――メンバーは何人くらいですか?

伊勢さん 正会員11名です。半数が阿南市在住の女性で、生まれも育ちも阿南市という人もいれば、県外から移住してきた人や転勤族の妻という人もいます。

―――どんな活動をしているんですか?

伊勢さん 子育てや介護などの理由で、「仕事をしたいけれど、外に働きに行けない」という人のために、ICTを活用した“テレワーク”という働き方があるんですが、テレワークを活用した代行業務やテレワークの啓発・推進のための養成講座も行っています。

 

在宅で代行業務を行うテレワークという働き方

―――“テレワーク”の「テレ」が「電話」をイメージするせいか、コールセンターと勘違いしている人もいますよね。

伊勢さん そうなんですか!? テレワークとは「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語で、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を意味します。あらかじめ定められた時間を定められた勤務場所(オフィス等)で勤務するこれまでの働き方に対して、テレワークはICTを活用することによって、働く時間と場所を働く人が自由に選択できるのが大きなメリット。子育てや介護をしながら在宅で仕事をする人を「テレワーカー」と呼びます。

―――テレワーカーの養成も行っているんですよね。

伊勢さん そうですね。在宅で働くために必要な知識や技術を身につけるための養成講座を行い、講座を修了した20名のテレワーカーも一緒に活動しています。

―――具体的にはどんな仕事をされているんでしょうか?

伊勢さん 時間や場所を選ばずに働けるテレワークには、パソコンを使う仕事が向いています。インターネット環境があれば、どこにいてもオフィスで働いているのと変わりなく仕事をすることができます。主に行っているのは企業や自治体の代行業務が中心です。

【業務の一例】

・講習資料電子データ化・html作成(紙資料をスキャンし電子データとして保存・閲覧できるようにまとめる)
・名刺の電子データ化
・Webサイトリニューアルにともなう文字や画像などのデータ移行(CMSというWebサイトを作成するためのサービスを利用してデータを新しいサイトへ移す)
・Excelデータ入力
・お店の取材・撮影・記事の執筆
・年賀状デザイン
・セミナー用のパワーポイント作成(セミナー講師用のパワーポイントを紙資料から作成)

伊勢さん 「ホームページをリニューアルしたいけど、どうしたらいいの?」とか、「年賀状を出さないといけないけど時間がないから、代わりに作ってもらえない?」などの相談もあります。困りごとの相談にのり、解決策のご提案をしています。

―――どこも人材不足ですから、資料作成やデータ入力など手伝って欲しいと思っている人は多いんじゃないでしょうか?

伊勢さん そういう方はぜひ、ご依頼ください(笑)。

 

テレワーカーになるには?

―――仕事の幅も広いですが、皆さん、前職でそういった仕事をされていたんでしょうか?

伊勢さん 私たちは全員、特別なスキルや経歴を持っているわけではなくて、共通しているのは家族の世話に奮闘し続けていることです。そうした日々の中で、ふと立ち止まり、「このままでいいのかな?」と自分自身に目を向けたとき、“私が私である時間”が必要なんだと気づいて。時間的な制約があり、外に働きに出ることはできなくても、社会と関わり、自分らしく生きる方法を探して巡り会ったのがテレワークです。同じような思いを抱えている人が働き方を考えるきっかけになったり、視野を広げるチャンスになればと願っています。

―――初心者でもテレワーカーになれるんでしょうか?

伊勢さん 在宅ワークというだけで、ほったらかしにするわけじゃないので大丈夫です。クライアントとテレワーカーの間にはテレワークコーディネーターがいて、テレワークコーディネーターはクライアントから相談を受けた業務の見積りを行い、作業手順を決め、テレワーカーに伝えます。また、品質を保つため、ワーカーの作業完了したものをコーディネーターがチェック・修正指示などを行い、納品しています。業務完了後も反省会を行って、少しずつスキルアップできるよう、サポートしています。

―――実際にテレワークをされている方の感想をお聞かせください。

伊勢さん テレワークのいいところは、働く時間と場所を選ぶことができるため、子供の急な病気や学校行事にも対応できることですね。子供のことで会社を休むのは後ろめたい気持ちになるものですが、テレワークだと自分でスケジュール管理ができるので、やり方次第で子育てを思い切り楽しむことができます。子育てだけでなく、自分が体調を崩したり、別の予定がある時は仕事の量を調整することもできます。

―――「パソコンが壊れた!」なんて、初歩的なトラブルはないんですか?

伊勢さん 今のところはないです(笑)。仮にそういう場合でも業務ごとにチームで作業しているので、トラブルがあったときや困った時は助け合って仕事を進めます。仕事場所は自宅だけではなく、コワーキングスペースで行うこともできるので、他のテレワーカーと一緒に作業したり、スキルやアイデアを共有することもできます。

―――では、テレワーカーの方達が一番苦労するのは何でしょう?

伊勢さん 『エランヴィタル』の場合、テレワーカーの方には個人事業者となってもらい、個人と契約するというカタチで発注を行っています。そのため、自分自身が経営者になるので、クオリティの管理や納品など仕事はもちろん、確定申告なども含め、全部自分で行わなければならないことが大変だと思います。

―――仕事含め、経営者としての経験もゼロからスタートというわけですね。

伊勢さん 「できない」と思ってチャレンジしないでいると、成長につながりません。テレワークの仕事も多岐に渡るので、機会があれば色々なことに挑戦するといいんじゃないかと思います。「○時までには子供のお迎えに行かないといけないから、○時には仕事を終わらせよう」とか、洗濯と食事の準備を同時にして・・・と主婦業はマルチタスク。女性は元々複数のことを同時に行い、処理する能力に長けているので、ゲーム感覚でスケジュールを組み立てて、少々の負荷を逆に楽しんでいるという人が意外と多いように思います。

―――何か気をつけないといけないことはありますか?

伊勢さん テレワークは文字によるコミュニケーションがとても重要です。案件ごとのチームやクラウドソーシングサイトで顔をあわせることなくチャットなどでやりとりを行うケースが多いので、文字だけで伝える難しさに直面することがあります。目の前にいない相手だからこそ、精一杯の誠意をもって丁寧に仕事をすることが大切だといつも感じています。

 

女性目線が効いた総合ウェブサイト『makemake 阿南』

―――皆さんが手がけた仕事を、私達が見ることができるものはありますか?

伊勢さん 2018年12月に開設した徳島県南「阿南」の総合ウェブサイト『makemake 阿南(まけまけあなん)』(*対象エリア小松島市・阿南市・那賀町・美波町・牟岐町・海陽町)をぜひご覧ください。テレワーカーたちが取材し、記事を書くことで就労の機会も増え、徳島県南にある企業やお店のPRをすることで地域経済の活性化にもつなげ、阿南から徳島県全体を盛り上げたいとの強い思いで作りました。

―――「makemake阿南(まけまけあなん)」ですね。

伊勢さん 器にあふれるほど大盛りの状態をさす「まけまけいっぱい」という阿波弁と、ゼロから作っていく「make」をかけて、どんどん大きくなっていきたいという思いも込め名付けました。「阿」波(徳島県)の「南」、「阿南」には自然・街・食・歴史・文化・産業・人・・・など、数え切れないほどの素晴らしい魅力があります。地域活性化や地方創生に取り組む企業と連携し、阿南市の魅力を「まけまけいっぱい」に発信する情報ポータルサイト『make make阿南』は、阿南市で生活や子育てをしている女性ならではの目線でお伝えし、取材先の地域周辺情報や耳寄りなお知らせをプラスした「わたしのまけまけINFO」も併せてお届けします。阿南市に暮らしていてもあまり知られていないとっておきの情報はもちろん、移住を考える人や観光やビジネスで阿南市に来られた人に頼りにされるサイトに成長していけるよう努力し、県南エリアを盛り上げていきたいと考えています。

―――今後の活動について教えてください。

伊勢さん 私達は、在宅でも働けるテレワークという働き方を通じて、家庭の事情などで女性がやりたいことを我慢している現状を変えたいんです。女性ももっとやりたい事を貪欲に望んでいいと思っています。お母さんが楽しく元気にしている方が、家庭が明るくなるように、社会でも同じことが言えるのではないと思います。女性が元気なコミュニティが地域全体を明るく活性化してくれると思います。

―――確かにそうですね。

伊勢さん 在宅ワークを希望されて相談に来られる方の背景には、ご自身や家族の病気、障がい、DVなど事情は様々です。現在の環境、抱えている悩み、望んでいることは人ぞれぞれで、1つの方法ですべてが解決できるとは思っていません。一人で悩み、自分の能力や魅力に気づいていない人に、ポテンシャルを高め、発揮することで自分の望む生き方を見つけて欲しい。そのきっかけ作りのお手伝いができればと考えています。新しい法人を立ち上げて、まだ1年にも満たない未熟な団体ですが、メンバー全員、熱い思いを持って活動しています。『makemake阿南』を始め、地域の方々のご支援があって、私達の活動は成り立っていいます。感謝の気持ちを忘れず、「どんなことやってくれるの?」「お店の取材に来てほしいんだけど」といった要望にいつでもお応えできるよう、気軽に相談されるような団体として成長できればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

※テレワークなどに関する問い合わせは特定非営利活動法人チルドリン徳島へお願いいたします。
https://child-rin-tokushima.com/

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◎参考サイト makemake阿南

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探訪!海陽町のカフェ&アートスペース『タニのいえ』

おおらかで温かいアートスペース『タニのいえ』

日本の”白砂青松百選”にも選ばれた大里松原海岸の近くに、日々の暮らしをアートの視点で切り取って見せる不思議な家があります。名前は『タニのいえ』。家主は宮本紫野さん。海陽町のおおらかで温かい雰囲気の中で育った元気な女の子が、大人になり、故郷に戻って作ったワクワクとドキドキを集めた気取らないアートスペースは、街中のギャラリーとはちょっと違う、ほっこりとした居心地のいい場所。へんてこりんなものもいっぱいだけど、そのすべてがたまらなく大切で、愛おしい。宮本さんの好奇心によって企画された展示を振り返りながら、『タニのいえ』の魅力と今後の展望についてお話を伺いました。


◎タニのいえ
徳島県海部郡海陽町大里馬谷3
開店日 月、金、土曜 12:00〜17:00
問い合わせ tanninoie.k@gmail.com
※臨時休業有り。
FB、Instagram、Twitterの「タニのいえ」ページにて随時情報発信。

 

個性的な企画展、いろいろ!

―――『タニのいえ』はどんなお店ですか?

宮本さん 作品展示と雑貨販売とカフェと少しのお惣菜販売をしています。
元々は築70年ほどの私の祖父母の家で、10年ほど空き家になっていたのをそのまま使用しました。祖父母が「谷」という苗字で、小さいころからこの場所を「谷の家」と言っていたので、そのまま『タニのいえ』という店名にしました。

―――作品展はどのようなものをしていますか?

宮本さん 展示は基本的に企画展の形をとっています。私が企画を考え、それに合わせて作家さんに声をかけて作品を展示してもらいます。作家さんとして活動している方の作品はもちろんですが、企画によってはこどもが撮影した写真や近所のおばちゃんに聞いた昔話、友人たちに書いてもらった文章なども展示しています。

アートと呼べるかどうかは分かりませんが、自分がワクワクドキドキしたり、新しい世界や考え方に触れさせてもらえるものを展示しています。

―――これまで開催した企画展について教えて下さい。

宮本さん 第一弾は「祖父母展」を開催しました。

これは、それぞれの祖父母をテーマに作家さんには作品を作ってもらい、作家さん以外にも友人や近所の人たちに声をかけて祖父母についての文章や写真を展示してもらいました。


有名でもなんでもない普通の人たちが生きている、生きていた匂いのようなものを伝えたいと思い企画しました。

第二弾は「10歳以下と80歳以上が撮る インスタにはあがらない日常写真展」です。

10歳以下のこどもと80歳以上のお年寄りに、使い捨てカメラで自分の家の中で気になったもの好きなものなど何でも自由に撮ってもらった写真を展示しました。

これは、上手でも綺麗でもなくても良い作品はあるし、その歳でしか表現できないものがある、ということを意識して企画しました。

 

第三弾は「日常を視る目」。

日常を様々な目線で見つめ作品にしている作家さんたちの作品を展示しました。

ありふれてつまらないと感じがちな日常だけれど、目線を変えたら少し世界が変わるかもしれない、と考え企画しました。

 

現在は「16人の超個人的な海外体験記」を開催しています(2019年4月8日まで)。

友人たちの海外での体験を写真や文章で表現してもらっています。

テレビやネットですぐに海外の情報が手に入りますが、人によってタイミングによって同じ場所に行っても感じ方は違うと思います。そんな、個人的に見て感じてきた色んな国を教えてもらいたいと企画しました。

 

カフェや雑貨販売+お惣菜も!

―――カフェでは何がいただけますか?

宮本さん デザートとドリンクをお出ししています。

デザートは、阿波市のお菓子職人さん『うるうるず』さんのスコーンやアイス、焼き菓子を季節ごとに種類を変えて。それに、海陽町のお菓子作りが上手な友人がきまぐれで作ってくれるパウンドケーキなどをご用意しています。おすすめは『うるうるず』さんのアイスと友人のパウンドケーキを使ったパフェです。

ドリンクは、香川県高松市の『プシプシーナ珈琲』さんの豆を使用したコーヒーや、自家製シロップのジンジャーエール、梅ジュース、『うるうるず』さんのアイスを乗せたクリームソーダやコーヒーフロートなどがあります。

―――雑貨はどんなものを販売していますか?


宮本さん 様々な作家さんの手作り雑貨やZINEと、徳島県内の障害のある人たちの福祉施設で作っているグッズを販売しています。母が染色家で私も少し制作しているので、母や自分が作った藍染やシルクスクリーンで制作した衣服やアクセサリーなどもあります。

―――お惣菜はなぜ販売しているのですか?

宮本さん 86歳になる近所のおばちゃんが「お惣菜も売ってくれたら助かる」と話してくれたので始めました。歳をとって体調が悪い日も多いのに自転車で少し離れた店にお惣菜を買いに行く姿をいつも見ていたので、おばちゃんの生活が少しでも楽になればと思い。いざ初めてみたら、おばちゃんはほぼ毎営業日来てくれるんですが、それ以外にも小さいお子さんを抱えて仕事をしているお母さんや、晩酌の肴に、と時々買いにきてくれる方もいます。

「わざわざ車でスーパーに行かなくてもちょっとおかずが買えて助かる」と言ってくれて、みんなの生活のちょっとしたお手伝いができていると思うと嬉しいです。海陽町久尾の『岩崎屋』さんがお惣菜を出してくれたり、郷土料理のかきまぜ寿司を販売する日もあります。

ちょっと気分を変えたい人が気軽に立ち寄れる場所

―――なぜ『タニのいえ』を始めようと思ったのですか?

宮本さん 田舎でも多様な表現や生き方、価値観に触れられる場所があれば良いなとずっと思っていました。同時に、田舎に住む普通の人たちの魅力を常々感じていたので、彼彼女らが自身でも気づいていない魅力を伝えたいとも考えていました。

そこで、学生時代に地域起こしを目的としたアートプロジェクトの研究をし、自分でも商店街や町全体を舞台にしたアートイベントの企画をいくつかさせていただいたんですが、自分には開催期間だけ人がたくさん来て終わったら去っていくようなイベント型のプロジェクトは向いていないと感じるようになったんです。たくさん人が押し寄せることは無くても、いつも存在してじわじわと時間をかけてその町に馴染んでいくような。そして地域外からもポツポツとでも人が来て、展示もこの町も楽しんでもらえるような。そんな場所を作りたいと思うようになり、ちょうど空き家になっていた祖父母の家もあるし、ちょっとやってみようかな、と2016年に「祖父母展」を開催しました。

―――その時は展示と雑貨販売のみだったようですが、カフェも始めたのはなぜですか?

宮本さん 始めはカフェをしようとは全然思っていなかったんですが、色んな人から「コーヒーも飲めるようにしたら良いのに」と言ってもらい、「田舎でもカフェって需要あるんやな」と気づきました。また、カフェをすれば展示に興味がない人も足を運んでくれるかもしれない、と思いました。
もともと、近所のおばちゃんも子供も中高生も、地域外のアートやサブカル好きな人も、色んな種類の人が出入りする場所にしたいと考えていたので、「これはカフェ必要だな!」と。
それからカフェをしようと考えていると言った時に『うるうるず』さんや友人がお菓子の提供に快く協力してくれたのもとても大きいです。私はお菓子づくりもできないし、二人が協力してくれなかったらカフェはやっていないかもしれません。

―――実際にカフェを初めてみてどうでしたか?

宮本さん 展示だけよりも、色んな人が出入りしてお客さんの楽しみ方も広がったようで嬉しいです。カフェ目的で来たお客さんが展示もみてくれたり、この町でパフェが食べられるのが嬉しいと言ってくれたり、高校生や中学生が入ってきてくれたり。置いてある本を読みにコーヒーを飲みに来てくれる方もいます。遠方から展示目的で来てくださるお客さんはカフェで一息ついてリフレッシュしてから展示を見てくれる方も多いです。カフェにいるお客さんとお惣菜を買いに来たおばちゃんが会話したりすることも結構あり、そんな光景をみるのはすごく嬉しいですね。

―――今後の目標はありますか?

宮本さん 地域の中高生と関わりあって作る企画やワークショップをやっていきたいと思っています。せっかく近所に小、中、高校が揃っているので。また、子供たちが思いっきり楽しめる企画もやっていきたいです。小さな子供さん連れの親子も時々来てくれるんですが、作品があったり広い場所に来たらテンションが上がって走り回ったり触りたくなったりするんですよね。私の子供も2歳なんですが、まさにそうで。お母さんお父さんも子供たちを見るのに神経を使って大変で。なので、「ダメ」って極力言われない展示やワークショップをしてみたいです。

あとはジェンダーや人種など、田舎にいたらあまり身近に感じないで過ごしてしまうことを知って考えるきっかけになる企画もしていきたいですね。私は高校まで海陽町で育ったんですが、田舎特有の閉塞感をいつも感じていました。同じように感じている人や、そうでなくてもちょっと気分を変えたい人、日々に疲れた人、何か新しい刺激に触れたい人たちが、この場所で出会う作品、本、デザート、雑貨などに触れることで少しでも心が自由になってくれたら嬉しいです。

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プロフィール/宮本紫野 『タニのいえ』家主。


1986年海陽町出身、高校まで海陽町で育つ。京都造形芸術大学アートプロデュース学科、鳴門教育大学大学院修士課程卒業。学生時代から地域おこしを目的としたアートプロジェクトに興味を持つ。大学卒業後2009年徳島県神山町上角商店街にて自主企画展「なにげない日常にワクワク展」を開催。大学院では地域おこしを目的としたアートプロジェクトについて研究し、各地で開催されているプロジェクトに足を運びボランティアスタッフなどを経験。大学院卒業後「牟岐・出羽島アート展2015」などのディレクターを務める。2016年8月〜10月『タニのいえ』プレオープン。出産を経て2018年1月より再開。

 

地方と都会の二つの学校で学ぶ『デュアルスクール事業』

徳島で「働く」と「暮らす」を寄せる生活

~徳島の学校と都市部の学校、どちらの良さも体験できる『デュアルスクール事業』~

リクルートホールディングス発表の「2019年のトレンド予測」に「デュアラー」という言葉が踊るように、都市と地方の2地域に拠点を置いて活動する「デュアラー」は、これからもっとポピュラーな存在になるかも。そんな時、親は自由に動けても、「子供は?」「教育は?」。その疑問にいち早く取り組んできた徳島県。サテライトオフィスの開所をきっかけに、親子で二地域居住できる仕組みを探ろうと、2016年から『デュアルスクール事業』を開始しました。『デュアルスクール事業』の参加者第一号となった杉浦那緒子さんへのインタビューも交え、教育の可能性や新しい移住のカタチについて、紹介します。

※この内容は2018年11月25日(日)に東京のふるさと回帰支援センターで行われた『第5回とくしま回帰セミナー』の内容をもとに再編集して掲載いたします。

 

徳島発!
地方と都会の二つの学校で学ぶ『デュアルスクール事業』

私、徳島県教育創生課の西健治と申します。今、二地域居住という新しいライフスタイルに注目が集まっています。徳島県が『デュアルスクール事業』に取り組むことになったのは、サテライトオフィスに勤務する人からある相談を受けたことがきっかけです。


それは「親である自分は東京と徳島を自由に行き来できるが、子供は学校があるので、そうはいかない。どうにかならないものか?」というもので、子供たちが多様な価値観をもつためにも、一つの地域や学校にとらわれない制度が重要と考え、始まったのが『デュアルスクール事業』です。

https://dualschool.jp/

この名称は「地方と都市の両方で子供を育てる学校」というイメージで名付けられた徳島県独自の取り組みで、この事業を体験した子供たちが多面的な考え方のできる人材に育つことを願って実施しています。また、親の働き方の選択肢の拡大、交流人口の増加による地方の活性化や、移住における子供の教育への不安を解消することによる移住の促進など、様々な可能性をもった事業と考えています。

この事業の対象となるのは、小学1年生~中学2年生までのお子さんです。都市と地方、両方の教育委員会の了解が得られれば、学籍を移動させずに双方の学校を行き来できることを目標にしていますが、現段階では二つの学校に籍を置いたり、学籍を移動させずに行き来することはできません。そのため区域外就学制度を利用し、短期の転校というカタチで、私たちが目指す『デュアルスクール事業』の実証実験をしていこうと平成28年度からスタートしました。

その区域外就学制度を利用する人は転校と違い、住民票を移動させることがないので、保護者は学校移動の度に役所で転出入の手続きをする必要がありません。そのため児童手当や健康保険の変更といった事務手続きも不要です。

しかし一方で、区域外就学制度の受け入れは市町村に委ねられているので、なかなか理解をえられない場合もありました。これにつきましても平成29年7月、文部科学省からこれまで本県が提言していた内容が反映された通知が出されました。これによって地方での二地域居住が区域外就学制度の一例として認められ、明示されたので、今まで以上に『デュアルスクール事業』を行いやすくなりました。


そんな中、『デュアルスクール事業』の参加者第一号となりましたのが、美波町にサテライトオフィスを置く『ヒトカラメディア』杉浦さんのご家族です。杉浦さんが美波町でリモートワークをする2週間、地元の小学校(日和佐小学校)での就学が実現しました。

児童の就学期間中のサポート体制ですが、デュアルスクールには派遣講師がつき、非常勤の先生を該当の小学校へ1名配置しております。東京の小学校や保護者との連絡、学校生活の支援など、様々なサポートを行います。初めての学校にもスムーズに溶け込むことができ、最終日には「さよならはいわないよ。また来るからね」と言って東京へ戻っていきました。


これまでの実施例ですが、平成28年から今までに11回実施されていて、美波町以外にも海陽町の宍喰小学校などでも実施されています。遊覧船に乗ったり、地元の特色をいかした校外学習ができるのもデュアルスクールの強みと思います。

現在は二地域居住の方がデュアルスクール事業に参加することが多いんですが、お試し移住をする際も地元でどういった教育がなされているのか、その学校に転校して大丈夫かな?という心配はされると思います。そういったときにデュアルスクールをお試し移住にあわせてその期間、地元の学校に通えるよう利用していただくと、よりよくわかっていいのではないかと思います。

このような取り組みを続けていく中で、昨年10月に都道府県の優れた政策を表彰する全国知事会主催のコンテスト「第10回先進政策創造会議」で、最優秀賞となる「先進政策大賞」をいただきました。今後も事例を積み重ね、デュアルスクールを全国に広めていきたいと考えています。

 

徳島で「働く」と「暮らす」を寄せる生活

※聞き手はデュアルスクールの運営支援に携わっている株式会社『あわえ』の彌野静香さんです。

―――杉浦さんは『ヒトカラメディア』にお勤めですが、『ヒトカラメディア』という会社はちょっと変わった面白い会社で、不動産の仲介やスタートアップ支援も含め、「暮らし方」、「働き方」まで提案されています。その『ヒトカラメディア』は2015年の7月に美波町にサテライトオフィスを開設されたんですが、それまで徳島という地域をご存じでしたか?

杉浦さん 徳島県は知っていましたし、県のキャラクターのすだちくんはじめ、名産のものは知っていたんですけど、具体的にどんな暮らしができるかは知らなかったですね。

―――それを知ったのはサテライトオフィスが開所された後・・・ということになりますか?

杉浦さん そうですね。

―――2016 年10月にデュアルスクールの第一回の実証実験が始まったんですが、初めてデュアルスクールについての話を聞いたとき、どう思われましたか?


杉浦さん デュアルスクールの話の前に秋祭りでちょうさ(太鼓屋台)を見まして。私自身の生まれたところも荒事のある秋祭りがありまして。大人がかっこよく、頼もしく見えるというのはやっぱり祭りだな、と。それとこれだけ自然があるところなので、子供もいつかは連れて行きたいな、とは思っていました。なので、デュアルスクールの話を代表取締役から聞いたとき、全容がわかる前に「面白そうなんで、やってみます!」とOKしました。

―――では、内容を聞いたとき、どういったことに期待されましたか?

杉浦さん 息子が生まれも育ちも東京なので、田舎らしい田舎の経験が全くないまま育つのは、少し不安を感じていました。私が愛知県の地方出身ということもあって、より自然に触れる機会が多いと、生き物として生きて行く力は強くなることに期待。もう一つ期待したのは、「東京で暮らしてフツーと思っていることは、たまたまそこで生まれたからフツーなんであって、それぞれの地域にフツーと思うことや面白いことって、いっぱいあるんだよ」ってことを、子供にも知ってもらいたいな、と思って第一回目はチャレンジしてみました。

―――ちょっとその頃の思い出を振り返ってみたいんですが、杉浦さんのお子さんが通われたのが日和佐小学校です。統廃合や耐震などの理由から数年前に建て替えられているので、まだ新しく、木造のステキな学校です。


クラスは30人弱なので、全校で150人くらい。それに対して、息子が東京で通っている学校の全生徒数はおおよそ4倍。けれども、学校の施設面積は日和佐小学校の方が2倍〜3倍は広い。東京では、運動場で遊ぶにしても隙間を縫うようにドッチボールしている感じで、誰かとぶつからないかをいつも気にして遊ぶようでした。それが日和佐だとただまっすぐ走って遊んでるっていう。

―――そうですね。まっすぐ100mとれる運動場がありますから(笑)。校外学習もトンボを捕まえて、観察したり。そういう体験ができるのが田舎の良さですよね。

杉浦さん まさに水を得た魚のように、子供ってこんなに生き生きするんだなという様子でした。東京だと、実際に「体を使って触れる」ということがあまりないんですよ。匂いを感じるとか。徳島での暮らしだと授業中もそうですし、休日もそういう五感をフルに使った経験ができたのが非常に良かったと思います。

―――特に日和佐小学校はカリキュラムを先生方が努力されているということもあって、水難事故防止の授業で着衣水泳を町内の海水浴場で行って、ついでにカヌーでも遊んじゃおうといったようなことや、J2で活躍する徳島ヴォルティスの選手が来てサッカー教室が行われたり、いろいろな取り組みが行われていますが、お子さんから感想など、聞かれていますか?

杉浦さん 東京でもプールで着衣水泳みたいなことはやるんですが、日和佐の子たちは市営プールみたいなところへは行かず、川で遊びますよね?息子は、学校の授業のカヌーがとても楽しかったようです。


また、デュアルスクールに通っている間は、住居兼仕事場となるお試しサテライトオフィスに住んでいるんですけど、そこからちょっと行くと、鯵釣りのメッカみたいなところもあって、朝釣って、朝ご飯に間に合いますよね。学校でも家庭でも、川や海が近い暮らしが気に入っているようでした。

―――そうですね。

杉浦さん 海も川も近いので最初にトライするハードルは距離的にも精神的にも低いですよね。

―――杉浦さんはこれまでにデュアルスクールで5回、美波町に来ていただいているんですが、7月が2回、10月が3回。7月に来られてお子さんが川遊びが大好きになったんですよね?


杉浦さん そうですね。基本的に水に触れていたいって感じですね。地元のご家族に誘っていただいて、川遊びをしました。この川はここが深くなっているとか、よく知っている方と一緒じゃないと危ないので、親同士がちゃんとコミュニケーションをとれるのも、子供が学校に行っているからこそ。子供経由で親子さんと知り合うことができるのが、デュアルスクールのいいところ。だたの旅行者だったら、なかなかわからないですよ。

―――生活の中でのつながりができるってことですかね?


杉浦さん 確かに人口は少ないんですが、私も含め、私の子供のことを知っている大人がたくさんいる。どんな方なのかというのが、こっちもわかっている。だから約束の時間に子供が帰ってこない時の焦り具合が東京と違うんですよ。東京の場合、携帯がつながらなかったら「どうしよう!」って探しに行くんですけど、徳島にいると「あの辺にいた」っていうのを隣近所の方から教えてもらえるので、誰と一緒にいるというのがわかると、「こっちに向かっているらしいよ」というのも聞けて、GPSよりも具体的な情報が入るのが面白いですよね。

―――おばちゃんネットワーク、スゴいですよね。

杉浦さん そうそう。だから子供だけで海の近くに行っていても、周りの大人が気にかけて教えてくれたりするので、そういう点では安心して暮らせましたね。

―――ここまで、『徳島で「働く」と「暮らす」を寄せる生活』ということで、お話を伺ってきましたが、デュアルスクールを通じて杉浦さんはそのことを体感できましたでしょうか?

杉浦さん 『ヒトカラメディア』という会社自体が「働く」と「暮らす」を面白くするというミッションを掲げています。会社という中身に適した器である「オフィス」を提供するということを考えていています。私の場合は「子供がいるから」とか、「東京で事務職をしているから」という理由で、チャレンジできなくなるというのは、自分で自分のやれることを制限しているように思います。一方で、子供からすると面白そうに仕事をしている大人って、とても魅力的だと思うんですね。ですから、私は工夫して「働く」ことと「暮らす」ことをもう少し寄せて、子供も面白い経験ができるし、私も新しいことを試せるっていうのが、このデュアルスクールを通して体験できたと感じています。1回目のデュアルスクールの体験の後、社内の制度が増えました。会社の中で家族の看病理由になるんですが、月4回まで在宅ワークOKの制度ができたり、時間単位で有給を取得できるようになったり、オフィスに子供が帰ってきてもOKな制度ができたりと、東京でもちょっとずつ「働く」ことと「暮らす」ことを寄せて生活できるようになってきているかなと。そのスタートがこのデュアルスクールだったな、と感じています。

―――杉浦さんは「美波町にいる間は親子の時間が長い」ってよく言われていましたね。

杉浦さん 住居が2階でオフィスが1階なので、徳島にいるときは通勤時間がゼロ。通勤時間でロスしていた分は子供と一緒にいる時間になったり、家事や自分の時間に使えるので、徳島にいるときの方が時間的にもスペース的にも余裕があったと思います。

―――ありがとうございます。では、最後にデュアルスクールに興味のあるという方へ何か一言アドバイスをお願いします。


杉浦さん 生活拠点が変わるということに関してはそれなりに負荷がかかると思うんですが、チャレンジできる機会があれば、ぜひ試してください。経験することができれば、子供にとっても親自身にとっても非常にいいことだと思います。「徳島に行くたびに元気になって帰ってくるね」と東京のメンバーからも言われています。東京での普段の生活が情報過多で疲れていたということも知るきっかけになったので、徳島での暮らしは元気を充電する機会としても使えるので、ぜひチャレンジしてみてください。

―――本日は、ありがとうございました。

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プロフィール/株式会社ヒトカラメディア 杉浦 那緒子さん


愛知県出身・東京在住の小学生の子供がいるワーママ。ヒトカラメディアにてベンチャー企業様のオフィス移転をサポート。都市と地方の2地域間の学校に通うことができる「デュアルスクール」事業の参加者第1号でもある。2016年秋のデュアルスクール初参加を皮切りに2018年まで5回の参加、述べ滞在期間は11週間(約3ヶ月)になる。「リモートワーク」「在宅ワーク(大人が家で仕事をする)」「オフィス帰宅(子供がオフィスに帰る)」「環境づくり」「業務改善」など、育児×会社×社会の新しい働き方を日々模索中。

<掲載実績・登壇実績・経歴詳細>

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移住アドバイザー直伝!移住成功の極意

あけましておめでとうございます!

ついに2019年、平成最後の年を迎えました。
「今年こそ田舎暮らしを始めたい!」と意気込んでいる人も多いのではないでしょうか?

しかし、以前に比べると地方移住にはっきりとした目的や目標をもって移住先を探す人が減っているように感じます。その反対に増えているのが「なんとなく田舎で暮らしたい」というぼんやりと田舎暮らしに憧れる人たち。いわゆる漠然層が多く、ふるさと回帰支援センターで行われる移住セミナーでも漠然層をターゲットに田舎暮らしにかかるお金や地方の人間関係などをテーマにしたものが増えています。

そこで移住について、四国の右下エリアでの暮らしについて実感してもらえるよう、現在に至るまでの約40年間、お世話した移住者の数は200人を超え、定住率は100%を誇る徳島県移住アドバイザーの小林陽子さんに『移住成功の極意』を伺いました!

これまで何人もの移住に携わった小林さんに、スムーズな移住のコツとは・・・。

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徳島県移住アドバイザー 小林陽子
1950年徳島県海部郡日和佐町(現美波町)生まれ。関西へ進学し、結婚。1983年にUターンし、作家・瀬戸内寂聴さん主宰の『寂聴塾』に参加。寂聴さんとの長年の交流とパワフルな生き方が注目され、2018年春に日本テレビ『人生が変わる1分間の深イイ話』に取り上げられ、寂聴さんの愛弟子として話題を呼んだ。現在は総務省過疎対策委員も務める。

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極意その1
1年間は静かに暮らすこと

いきなりやる気を削ぐようですが、私は移住する人には「1年間は静かに暮らして」と言います。地域のために役に立ちたいとか、特別なことをしたいと張り切る人もいますが、まずは自分の生活を安定させることが最優先です。移住したすぐはATMがないとか、大きなスーパーがないとか、都会のモノサシで町を見ます。時間、距離、セキュリティ、いろんな感覚が都会とは違います。環境・水・方言などの変化に慣れず、体調を崩す人が多いです。まずは家や生活を整え、地域の中で知り合いを増やし、人関関係を知ることが大事ですね。田舎へ行くと1年間は目立ちますよ。2~3年もたてば馴染みます。慣れて、馴染んで、それから地域のことを考えたり、やりたいことやってください。

 

極意その2
田舎にはプライバシーはないと思え

個人情報とか、プライバシーを気にする人は、あんまり田舎には向いてないですね。ご近所には冷蔵庫の中身まで知られていると思ってください(笑)。移住者に興味津々で「どこから来たの?」、「仕事は何をしているの?」、「どうしてここへ来たの?」は必ず訊かれる質問の3本柱です。悪気はないのです。訊かれると思い、答えを準備しておきましょう。それから外出する時、ご近所さんから「どこいっきょんえ?(どこに行くんですか?)」と声をかけられることが多々あると思います。いちいちどこへ行くか答える必要はありません。そういう時は「ちょっと」と笑顔で言えば大丈夫。何か話さないといけない時はお天気を話題にすればいいです。町の行事への参加や集落への集まりなど苦手な人もいるでしょう。移住するときに相談した自治体の人やご近所や集落の長に、前もってサラッと相談しておきましょう。そういうコミュニケーションにもすぐ慣れますから、田舎ならではの距離感を楽しんでください。

 

極意その3
家探し、移住はできたら1、2年かけるつもりで

田舎暮らしのいいところは家賃が安いこと。徳島県では安く貸してもらう代わりに改装費を借り手が負担して、自分好みにリフォームするというやり方が大分浸透していますね。田舎でも不動産屋さんがある地域もありますが、役場に相談すると空き家を紹介してもらえます。相談してすぐにいい物件が見つからなくても、希望を伝えておいて時々連絡しましょう。希望の物件が出たら知らせてくれるので、ご近所がどんな方か、地域の特性も含めて1~2年かけてでも自分が「いいな」と思う家をじっくり探した方がいいですね。徳島は台風が来るので古民家は雨漏りが要注意ですよ。シロアリの被害も含め、改修ヵ所を貸主か借主のどちらが直すか、まずよく相談してください。改修費用の補助がある自治体もあるので、上手に活用するといいですよ。

 

極意その4
お金の準備はできていますか?

移住相談の際、失礼承知で「お金ありますか?」とお訊きするようにしています。「田舎へ行けば家賃も安いし、何とかなるだろう・・・」ではダメですよ。引っ越しや車の購入など、結構費用がかかります。それに仕事はありますが、都会ほど給料がもらえるとは限りません。環境の変化で体調崩したり、何がおこるかわかりません。移住した場所に、困ったとき頼れる人がいるかは大事です。知り合いや身内で相談できる人がいるといいですが、見ず知らずの土地へ行くのであれば、ある程度しばらく生活できるお金の用意はしてきて下さい。特に起業されたい方、いろいろな支援制度はありますが、資金を蓄えて、それなりの準備はしてきてください。

 

極意その5
一生過ごすと思わず、軽い気持ちで移住せよ

 

最近「田舎暮らしが向いてないと思えば都会に帰ればいい」って思ってます。私も都会からUターンして40年近くなりました。今はインターネットで欲しいモノも情報もすぐ手に入るし、気軽にどこへでもでかけられます。「一生住まなくては!」なんて、そんなに重く考える必要はないですよ。今は「田舎で暮らしたいな」と思っていても、この先どうなるかは、わかりません。そんなに覚悟して来なくてもいいんです。自分自身やご家族が「ここで暮らしたい」と思える場所を見つけられることが一番です。「徳島がいいな」と思ったら一度遊びに来て、田舎のよさや人のよさ、生活を体感してください。お待ちしています。