【移住エッセイ第6回】美波町へいらっしゃい!

徳島県南部はきゅうりの促成栽培が盛んで、海陽町には現在およそ30軒の農家が年間1200tのきゅうりを生産している。特産のきゅうりに着目し、若い農業者と増やそうと、美波町、牟岐町、海部町の3町とJAかいふと徳島県南部総合県民局が協力し、「きゅうりタウン構想」を推進している。移住フェアでは新規就農する人に向け、そんなお話もしています。

きゅうりタウン

移住フェアで垂涎の的は、子供連れの若夫婦。
「ウチの町へ来てください」
パンフレット手に、各町の呼び込みが群がる。

「こんな所へ来るの初めてで、話伺うのも最初なんです」
四十代夫と妻、小学校三年生の男の子と一年生の女の子。
移住考え、初めてフェアを訪れた。
多くの町の中からウチを選んだ理由は…。
「海の近くがいい。けど、どこへ行って相談したらいいのか迷ってたら、名前が娘と同じ“みなみ”だったので来ました」
運命の出会い。
さっそく質問を開始し、分かったこと。手堅い仕事に就いているが、マンションのローン払ってギリギリの生活。定年後もローンが残る。
仕事を捜し、生活を立て直したい。

やりたい仕事はなんですか。
「やったことないんで、甘い難しいって言われるの分かってるんですが、農業やりたいんです」
思わず役場担当と顔見合わせた。
やりたい仕事は農業か…。

田舎暮らし、やりたいことの第一位は農業。
「畑して自給自足したいんです」
「土を触って野菜育てたいんです」
都会人の憧れ。
農業だけで生活するのは難しい。
四十代、子供がいる。しかも未経験、失敗は許されない。いつもなら、
「ダメ、無理ですよ」
他の仕事をお勧めしてきたけど、お話した感じ、真面目でコツコツ仕事するのに向いている。農業を選択のひとつに紹介しても良いと判断した。

国や県が、農業者不足を何とかしようと育成講座や資金の助成、生活支援を行っている。
大変な仕事やけど、夫婦でマジメに働けば、今の収入よりはるかに良い。しかも独り立ちできるようになった時は、空いた土地を農家から設備ごと安く譲ってもらうこともできる。具体的な見積もり含めて説明したら、
「それって話が巧すぎません?」
「ちょっとヨソ廻ってきますわ」
力み過ぎたか、逃げられた。

終了間際、さっきの家族が再びやってきた。
「話もう一度聞かせてください。沢山廻ってきましたが、具体的な話が出たのはココだけでした」
承知しましたお話しましょう。
徳島県のきゅうりタウン構想を…。

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▲「移住先では農業をしたい」という人におすすめしているきゅうり農家。きゅうりには他の野菜とは異なるメリットがいろいろある。フェアでは詳しく紹介しています。