四国の右下

ゆかりの高齢者里帰りお試し居住実践モデル事業

ゆかりの高齢者里帰りお試し居住実践モデル事業として、美波町出身のJさんご夫妻とKさんご夫婦がモニターとして参加してくださいました。

美波町のお試しハウスに滞在し、将来移住を考える考えるきっかけにしていただくため、実際に1ヵ月間、町で暮らしていただきます。両夫婦とももともとこちらが地元なので、土地勘もあり、親戚や知り合いの方もいらっしゃって、和気あいあいと過ごされた様子でした。

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古民家の和室なので、部屋が寒いかも・・・と思い、こたつを置いていたら、こたつでのんびり過ごされたようです。

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【移住エッセイ第7回】美波町へいらっしゃい!

移住フェアに来られた後、移住希望の方たちは週末や連休に生活環境について詳しく知るために、美波町へ下見にやってきます。その時に町をアテンドするもの移住コーディネーターの仕事です。

 

都会風に暮らす

「諦めなくていいんだ」
東京から移住希望の彼と、町を見に来た彼女がポツンと呟いた。
そうよ、田舎にもネイルできる店はある。

田舎の女性のイメージって、もんぺ姿に麦わら帽子、手にはカマ。
とんでもない。
全員が畑仕事してるワケない。ただ日差しが強いから日傘に帽子、厚塗りの化粧してるオバさんは多い。
私のネイル、オシャレのためだけじゃない。ガーデニング、土で真っ黒の爪の隙間見せたくない。ジェルで固めた爪はシャベル替わり。移住してきたネイリストと相談して、白のフレンチ。
お値段3500円。

彼女曰く、フェアの時エリア絞らず二人で全部見て廻った。
「47都道府県のブースの中で、ネイルしてたの美波町の小林さんだけでした」
女は目の付けどころが違う。

海見て眩しそうなんで、サングラス貸す。
「カルティエなんだ」
車の運転、草刈りにも、サングラスは田舎の必須アイテム。
ブランド店無いし高い。我慢なんてしない。中古で十分、ヤフオク!でショッピング。

お値段4000円。
「こんなに綺麗なところがいっぱいあるんだ。越して来なくっちゃ、衰退させたらダメですよ」
海眺め、彼女が言ってくれた。

行列の出来る店は無いけど、古民家レストランで、都会なら一万円相当のフランス料理、5000円で食べられる。
地下鉄は無く、JRが一時間に一本なので車は必要。
白いフェラーリ、赤いポルシェに乗ってる人もいる。倉庫に入れ、普段は軽トラに乗ってる。

東京、駐車場代一ヶ月25000円もする。こっちは3000円。
彼がお母さんと住んでるマンション、家賃14万円。彼女の家賃と合わせたら、20万円。
こっちじゃ都会の駐車場代で一軒家に住める。

彼の携帯がせわしく鳴る。
「有給をとって来てるんですけどね…」
客は待った無し。24時間、かかってくる電話には出ると言う。
田舎じゃ仕事の選択肢も狭まり、賃金単価も落ちるけど…。

あと何か諦めることある?
田舎でゆったり、都会風に暮らしたら?

【移住エッセイ第6回】美波町へいらっしゃい!

徳島県南部はきゅうりの促成栽培が盛んで、海陽町には現在およそ30軒の農家が年間1200tのきゅうりを生産している。特産のきゅうりに着目し、若い農業者と増やそうと、美波町、牟岐町、海部町の3町とJAかいふと徳島県南部総合県民局が協力し、「きゅうりタウン構想」を推進している。移住フェアでは新規就農する人に向け、そんなお話もしています。

きゅうりタウン

移住フェアで垂涎の的は、子供連れの若夫婦。
「ウチの町へ来てください」
パンフレット手に、各町の呼び込みが群がる。

「こんな所へ来るの初めてで、話伺うのも最初なんです」
四十代夫と妻、小学校三年生の男の子と一年生の女の子。
移住考え、初めてフェアを訪れた。
多くの町の中からウチを選んだ理由は…。
「海の近くがいい。けど、どこへ行って相談したらいいのか迷ってたら、名前が娘と同じ“みなみ”だったので来ました」
運命の出会い。
さっそく質問を開始し、分かったこと。手堅い仕事に就いているが、マンションのローン払ってギリギリの生活。定年後もローンが残る。
仕事を捜し、生活を立て直したい。

やりたい仕事はなんですか。
「やったことないんで、甘い難しいって言われるの分かってるんですが、農業やりたいんです」
思わず役場担当と顔見合わせた。
やりたい仕事は農業か…。

田舎暮らし、やりたいことの第一位は農業。
「畑して自給自足したいんです」
「土を触って野菜育てたいんです」
都会人の憧れ。
農業だけで生活するのは難しい。
四十代、子供がいる。しかも未経験、失敗は許されない。いつもなら、
「ダメ、無理ですよ」
他の仕事をお勧めしてきたけど、お話した感じ、真面目でコツコツ仕事するのに向いている。農業を選択のひとつに紹介しても良いと判断した。

国や県が、農業者不足を何とかしようと育成講座や資金の助成、生活支援を行っている。
大変な仕事やけど、夫婦でマジメに働けば、今の収入よりはるかに良い。しかも独り立ちできるようになった時は、空いた土地を農家から設備ごと安く譲ってもらうこともできる。具体的な見積もり含めて説明したら、
「それって話が巧すぎません?」
「ちょっとヨソ廻ってきますわ」
力み過ぎたか、逃げられた。

終了間際、さっきの家族が再びやってきた。
「話もう一度聞かせてください。沢山廻ってきましたが、具体的な話が出たのはココだけでした」
承知しましたお話しましょう。
徳島県のきゅうりタウン構想を…。

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▲「移住先では農業をしたい」という人におすすめしているきゅうり農家。きゅうりには他の野菜とは異なるメリットがいろいろある。フェアでは詳しく紹介しています。

【移住エッセイ第5回】美波町へいらっしゃい!

まだ元気なうちに地方へ移住し、介護が必要になってもその土地でケアを受けながら暮らしたいというアクティブシニア。元気だからこそトラブルも引き起こす可能性があります。

アブないシニア

 

移住先と決め、引っ越して来た日、
「ウチの家ってどこでしたか?」
一年間はおとなしく静かに生活し、慣れて下さい。と、必ず移住者の方におすすめする。
特にアクティブシニアと呼ばれている都会からの男性に。

右も左も分からない土地へ来た。
受け入れてくれたお礼に何か為になることがしたい、とおっしゃる。まずは役場で手続き。自宅に迷わず帰られ、近所に何があり、ご近所にはどんな人が住んでいるのか、店やスーパーはどこにあって、水回り壊れていたら、家が傷んでいたら誰に頼む。
自分の生活整えることが最優先です。
地域への恩返しは、住民票移して下さっただけで十分。

一年目。病気すると思って用心したほうがよい。
環境変わるから。高血圧、アレルギー、骨折など、
「厄払いですね」
と、慰めるけど町の病院では満足せず、医者はどこ、車に乗って40分の総合病院へ走ることになる。

見慣れないヨソの人は目立つ、町の人は興味しんしん。三十分、長くて一週間後に、
「あんなことしてた、こんなこと言ってた」
と聞こえてくる。
イヤと思わず、買い物かごの中身まで見られていると思って行動したほうがよい。
一年もしたら慣れる。

一年目は失敗しても許される。ヨソからお出でたんや仕方ない。知らなかったで済ませられる。
若い人には、
「あーあ若いけん仕様がないな」
ただ、この町の常識越えた事やって迷惑かけたら一生言われる。
それも蔭で。
町の常識、暗黙のルールとは何か、当たり前に楽しく生活するための各町の知恵と癖、体で覚えていくしかない。生活しながら行事にも参加し、分かって欲しい。

二年目あたりから目だたなくなる。三年もしたら風景にとけ込み、町の人になっていく。体の調子、生活整え、支えてくれる知り合いつくり、そこからですよ、何かするのは。
人との距離が近い分、注意してても思ったことの掛け違いやすれ違いがおこる。早めに気づき修正し、先に待つアクティブな日々の暮らしに繋げて欲しい。

ご自分の一方的な善意や常識押しつける、アブないシニアはお断り。

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▲美波町では60歳代も”おねえさん”。地域に溶け込むためにも、まずは1年、様子をみてください。(※写真はイメージです)

【移住エッセイ第4回】美波町へいらっしゃい!

全国から各自治体が集まり、月1回くらいのペースで開催されている移住フェア。ブースに滞在する数分間で、夫婦の悲喜こもごもを垣間見、移住相談がいつしかカウンセリング状態に⁉

 

妻の本心

「移住者って、どんな方が…」の質問に、
「千差万別、赤ちゃんからお年寄り、ハーフからニューハーフまで」と返事する。

どんな方にも対応します。
ただ、仕事だけは出来る限り自分で捜してください。そのためにハローワークがあるんです。

一番難しいのが、50才代男性。
移住フェアに来る50代夫婦連れ、妻は横の夫見てニッコリ、
「先に行ってて、落ち着いたらスグに行くから」
嘘つけ、夫を移住と称して先にやり、自分は優雅に都会暮らし。
定年前、定年後、一人移住して来る男性に妻の影無し。

そんなに簡単に都会と同じ給料の仕事があるわけが無い。
妻にも仕事にも我慢して、出来るだけ自分の貯金増やし、妻を説得して一緒に田舎へ移住するのがベスト。
決して、妻の口車に乗ってはダメですよ。
男の人、定年後の自分の行く末が心配なのは、よく分かる。
毎日、釣りをして自転車に乗り遊んで暮らす…。
田舎へ移住したらバラ色の老後の生活が待ってるなどと思わないで欲しい。
横で妻は何して暮らす。
友達とのお喋り食事会、デパートでのお買い物、趣味の習い事、スポーツジムでの憂さ晴らし。
全て諦め、夫の食事作り、夫と地元誌に出てる外食の店巡りすることとなる。
妻に車の免許が無ければ最悪。
一人でどこへも出かけられない。一時間に一本、JRがあればよし、無ければ夫に頼り最寄りのスーパーへ行くしかない。
夫が知らない土地に移住したければ、妻は「アナタ一人でどうぞ」が本心。

夫の田舎に家がある場合、時々は妻と通い手入れをし、近所や親戚ともマメに付き合い、出来るだけ妻が嫌がる出来事がないよう努力しておくこと。
妻がカフェをしたいと言えば従い、習い事の腕を使って何かやりたいと言えば応援する。
そんな夫にならなければ妻と一緒の田舎暮らしなど望めない。

フェアで50代夫婦が座り相談開始。
妻ニッコリ、
「ネ、いいじゃない、毎日好きな釣りして暮らせるよ。先に行ってて」
すかさず、
「奥さん、来るつもりないんでしょ」
肩すくめ、ペロッと舌だした。

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【移住エッセイ第三回】美波町へいらっしゃい!

空き家はあるけど、貸してくれいない…。あなたの地域もそんな悩みはありませんか?

 

空き家あく

貸してくれませんよね?
「貸してくれます」
どうやって?
「貸して下さい」
と持ち主に言えばよいのです。

全国にいっぱいある空き家、貸してくれないと自治体は言う。調べるだけで空き家があくわけない。
貸して欲しい空き家があれば、持ち主捜し、貸して欲しい理由を述べ交渉すればよい。自治体が交渉出来ず、時間ない場合は誰かに頼めばよい。
誰に頼む?
業者か地域をよく知ってる地元の方、お好みでどうぞ。

貸して欲しい理由が重要。
借りたい人があってこそ説得力は増す。借り主捜しが最優先。
借りてくれるアテもないのに、貸して下さいは失礼。
人は貸すと決めた時から、いつ借り手が付くか気になる。
借り手決まり、毎月入るお金見て、
「お金のことなんていいと思ってたけど、毎月入るのは嬉しいな」

自治体のホームページ、空き家バンク写真の多くは、住みたいとは思えない。草が生え雨戸の閉まった空き家。数だけ並べて満足し、さぁどれにします。決まる訳がない。
人が住んでこそ家。

借りたい移住者が現れた。
登録してある空き家見せても、決まらない。もう少し見たい、もっと良いのがあるかもしれないと思うのが常。
車に乗せ町を走る。どこがお気に召すか探る。
「あすこも空き家、ここも空き家」
と指さすうちに、
「あすこ好き、ここ好き」
押しつけられた物件でない、自分が見て気に入った家が手に入るのが一番幸せ。

アナタが指名した空き家、持ち主が誰か当たってみましょう。
まずは、お隣から。
持ち主がお隣と、どう付き合っていたかが分かる、分かればベスト。分からない時は親戚を当たる。年賀状の住所だけで持ち主突き止めたこともある。

突き止めたら慎重に交渉。
コチラはこういう者です。
借りたい方がいらっしゃいます。
貸していただけませんか。

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▲昨年の夏に地元の大学に協力いただき、美波町日和佐地区の空き家調査を実施。点のついているところが空き家。状態も様々だ。

【移住エッセイ第二回】美波町へいらっしゃい!

移住コーディネーター小林陽子さんによる現場エッセイ第二回。少しでも人口を増やしたいとはいえ、来るもの拒まず…とはいきません。どの人を受け入れたらいいか、上手な断り方のポイントもご参考ください。

アナタ何者

町でお婆ちゃんに呼び止められる。
「人がおらんようになるのは困る。都会からようけ来てもらわんとな。けどな、妙な人だけは入れんといて、頼むでよ」
了解、気つけます。見極めないと迷惑かける。妙な人来た途端、噂が流れ、誰も家を貸さなくなる。

移住希望の方とは、移住フェアで会ったり、本人から役場へ電話かメールがくる。
聞き取れる範囲で調べてもらう。
お名前は?お住まいは?ご家族は?
もっと踏み込み相手の状況聞きたいときは担当から引き継ぐ。

男性から移住したいと役場に電話。姓と電話番号聞き、家族構成は夫婦と大きな子供が二人。
役場担当から引き継ぎ電話する。
「初めまして、お幾つですか」
夫六十五才、
「お仕事されてますか」
定年退職後働いてない。
「奥様は」
妻四十四才、二十一才の年齢差、
「お子さまはお幾つですか」
十八才と十六才、
「お勤めですか、学校ですか」
二人とも自宅。
「どんな家がご希望ですか」
近所無く、大型犬が飼え、自給自足できる田畑付き希望。
どうする、物件はある。
四人も移住してくれる、こんな嬉しいことは無い。
けど…。
推察と妄想が駆けめぐる。四人どうやって食べていくの。
担当と相談後、再連絡。
「履歴書出して頂けますか」
電話、かかってこなくなった。

いきなり男性が役場に来た。
「直接、いらっしゃったんですけど会って下さい」
役場担当から電話。男性独り、車で空き家無いかと各町を訪ねてる、元警察官。
お目にかかることに。
履歴書、免許書、身元を証明する書類、ズラリと並べ、金はある心配無い大丈夫を連発。
大丈夫かどうか決めるのはコッチでしょ。こういう方には遠慮無し、尋問を開始する。元警察官、尋問に対し、
「取り調べ受けてるみたいや」
持ち家という住所、グーグルマップで見たら駐車場。
結果、
「申し訳ありません。いま物件がありません。出ましたら連絡させていただきます」
嘘つく相手に連絡など、する訳がない。
見極めに基準など無し。

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▲2015年12月18日(金)大阪ふるさと暮らし情報センターで行われた移住相談会の様子。占い師か、尋問かというくらい、短時間で相手の希望を聞き出すので、終わる頃は全員ヘトヘトです。