皆さん、「事前復興まちづくり」という言葉はご存じですか?
東日本大震災以降、災害への備えの重要性が再認識され、まちづくりにおいても被災後を想定し、できるだけ被害を減らすことや、復興をスムーズに行えるよう、事前に準備しておくことが重要視されています。
そんな「事前復興まちづくり」に自主防災会の住民を中心に取り組んでいるのが、美波町由岐湾内地区です。
全国から防災学習のための視察も多い由岐湾内地区の自主防災会「西の地防災きずな会」に所属する地域おこし協力隊の渡邊 雄二さんが、「由岐湾内地区防災ツーリズムMAP」を作成しました。
由岐湾内地区防災ツーリズムMAP
「由岐湾内地区防災ツーリズムMAP」は、視察・研修で由岐湾内地区を訪れた人に向けた配付資料として作成されていて、防災や事前復興まちづくりに関連した場所を過去・現在・未来の時間の流れに沿って見学するのに役立ちます。
また、由岐駅と由岐湾内地区の民宿で設置されています。
「過去」 ~破壊と再生を繰り返してきた~
日本最古の津波碑『康暦碑』
由岐湾内地区は、これまでに何度も地震や津波による破壊と再生を繰り返してきた場所です。
なかでも1361年の南海地震の被災記録は『太平記』に記されており、その犠牲者を供養するために建立されたとする『康暦碑』は、現存する日本最古の津波碑と言われています。
この他にも地震の痕跡が街路の石碑として残されており、防災学習に活用されています。
「現在」 ~大切な命と暮らしを守る~
由岐支所避難階段
私有地を避難路として整備したマイ避難路
南海トラフ巨大地震が発生した場合、由岐湾内地区は最大震度7、津波影響開始時間12分、最大津波水位12.3m、地区内の99%の建物が津波浸水すると想定されており、日頃から住民・地域・行政が連携し、防災活動に取り組んでいます。
由岐支所を始めとした公共施設の津波避難ビルの整備や避難路の整備の他、私有地をマイ避難路として整備するなど、行政の行う「公助」だけでなく、自助、共助として自主的に住民主体の防災活動が行われています。
昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から開催をとりやめた「避難まつり」もこれまでは毎年行い、地域全体の防災意識を高めています。
「未来」 ~幸せな地域を次世代に継承する~
2012年から由岐湾内の3地区の自主防災会が連携し、由岐湾内3地区自主防災連合会を立ち上げ、住民主体による事前復興末づくりを始めました。徳島大学の地域創生センター井若 和久さんの協力のもと、地域住民に広く事前復興まちづくり計画の必要性や内容を理解してもらうための勉強会も行い、事前復興まちづくり計画の立案に役立てるため、まちの魅力や課題、防災・復興意欲や地域継承意欲に関する住民意識調査、住民参加型のワークショップなどによる「事前復興まちづくり計画素案」も作成されました。
この計画をもとに地域継承の担い手である若者世代が安心して住み続けることができるよう、高台の住宅地開発を前提とした、住宅地計画コンペティションを開催するなど、地域住民による未来のまちづくり活動が行われています。
高台住宅地計画コンペティション優秀作品
これら事前復興まちづくりの活動は、地域の学校と協働し防災学習として継承されています。
3年前、由岐小学校の卒業生が卒業製作として災害後の町の未来を真剣に創造して製作したジオラマは、現在も在校生の教材として活用されています。
卒業製作のジオラマ
今回、「由岐湾内防災ツーリズムMAP」を作成した地域おこし協力隊の渡邊さんは普段、自身の受け入れ団体である「西の地防災きずな会」が運営する地域コミュニティカフェ「まったりカフェみなみ」で仕入れから調理提供まで担当されています。日頃から住民同士が顔を合わせる場を設け、交流を図ることも防災対策の重要な役割となっています。
「由岐湾内地区防災ツーリズムMAP」はこちらでも見ることができるので、気になる方は、ぜひお立ち寄りください。
■由岐湾内地区防災ツーリズムMAP設置場所
由岐駅及び由岐湾内地区の民宿
■店舗情報
まったりカフェみなみ
運営:西の地防災きずな会
住所:徳島県海部郡美波町西の地字西地6-7
美波町由岐老人福祉センター1F
TEL:080-6386-9997
営業日:毎週火曜日10:00~15:00
店内ランチ(味噌汁付き) 600円
お弁当(味噌汁無し) 550円
※ランチ、お弁当は電話にて事前予約制(コロナウイルスの状況により、弁当販売のみの場合があります)