世界が注目するお遍路文化!?~平等寺副住職 谷口真梁さんインタビュー~

四国の右下エリアでの暮らしを語るとき、欠かせないのがお遍路。今では外国人の歩き遍路の方も増え、地域の方達が身振り手振りで会話し、お接待をする光景はほのぼのとあたたかい気持ちにさせてくれます。四国霊場第二十二番札所平等寺はお遍路さんや一般の旅行者が泊まれる宿坊があり、いち早くフリーWi-Fiも設置。お遍路さんや檀家さんだけでなく、一般の人も気軽るにお寺へ足を運んでもらえるよう、毎月第二日曜日、誰でも参加できる法会とお接待のランチと共に仏教に親しむ「日曜礼拝」を開催。お寺と親しむ機会を増やし、地域との交流を大切にする副住職の谷口真梁さんにお話をお聞きしました。


四国霊場第二十二番札所 白水山平等寺 https://www.byodoji.jp/

 

生い立ち~平等寺の住職の息子として生まれて~

四国八十八箇所霊場第22番札所平等寺の住職の息子として徳島県阿南市に生まれました。姉が二人の3人姉弟の末っ子です。高校を出るまでずっと平等寺で育ちました。

幼い頃はお遍路さんがなぜ自分の家のお寺にお参りに来ているのかもわからず、落ちている木の枝を拾ってはお遍路さんをつついたりといういたずらをしては叱られていました。ある日、焼き芋をしようとして大師堂の裏で枯れ葉を集めて焚き火をしていたら、お寺の従業員さんに大師堂を燃やそうとしていると思われ、こっぴどく怒られました。それに懲りて、それ以来遊ぶ時でもお寺の方には近づかなくなりました。

阿南市でも特に田舎の新野町で小中高校に通い、高校卒業までは仏教や寺のこととは無縁の子供時代を過ごしたので本当に何も知りませんでした。実は高野山大学に入ってから般若心経などのお経を覚えたほどです。

父親が僧侶で平等寺の住職であるにも関わらず、大学に入るまで僧侶とは何をする仕事かもほとんど知りませんでした。僧侶とは人を楽しませるような仕事かなとなぜか思っていたので、高野山大学の1年目の授業から空海のことを学んだり、古い経典や古文書を読まされたりしてびっくりしました。高野山大学では通常1年生や2年生で僧侶になる修行ができますが、私は最初は何だか抵抗感があり、ギリギリ4年生になってようやくその修行をしました。

なぜ僧侶になると決めたのか、特別な理由は正直な所ありませんでした。ただ、反対に僧侶になりたくないと思ったり、高野山大学に行かないという選択を考えたことは不思議とありませんでした。

大学に入った頃からちょうどパソコンが一般的に普及し始め、そこで初めてパソコンに触れプログラムを組むようになり、そういう仕事もいいかなと思った一時期もありました。ただ、次第にプログラマーになるという考えは薄れていき、やはり僧侶の道を選びました。今でもその選択に疑問はありません。

高野山大学から同大学院に進みました。専門は仏教宇宙論の研究です。2千年前に仏教のお坊さん達が頭の中で何を考えていたのかを実際に図面にしてみようと思い、やってみたらけっこう面白かった。修士号を得て、更に博士課程を全部終えた後、高野山真言宗総本山の金剛峯寺で勤務することになりました。

高野山大学の博士課程では課程終了後3年以内に博士論文を書かなくてはなりません。金剛峯寺に勤務しながら空き時間に博士論文が書けるのではないかと思っていましたが、本山勤務は本当に激務で論文を書いている暇がない程、朝から晩まで働き詰めの毎日でした。事務所で朝3時ぐらいまで働いていることはざらでした。これは一つには私が勤務していたのが国際局で外国相手なので、時差の関係もありました。当時、国際局にはスタッフが一人しかおらず、それが私でした。私が入る1年程前に国際局はできたそうですが、設立当初のスタッフは皆別の部署に移動し、まだ新米の自分一人というハードな状況でした。今では国際局は4人体制になっています。仕事内容は主に、海外に出向している僧侶達のサポート業務で、ビザの申請・延長などひたすらパソコンに向かってのペーパーワークでした。米国で高野山がNPO法人を立ち上げた時も、そのNPO法人申請書類を作ったりもしていました。海外に出向した僧侶たちは、大抵の場合は宗教家ビザで滞在しています。当然ビザの延長手続きなどが必要になりますが、本人達は非常に一生懸命布教活動をしており、超多忙でビザ申請などをしている暇はないので、こちらがしっかりと支援しようと思って頑張りました。

その他には、高野山にやってきた、在日諸外国の大使や要人の接遇などもしていました。まだ、高野山が今の様に外国人観光客で溢れかえる前で、高野山を訪れる外国人は、大使や大使館員など限られた人たちでした。私は頻繁に東京に出張に行かされましたが、その際には行き先は大使館であることが多かったです。

あと、高野山にやってきた外国人のツアー団体客を奥の院の裏の山の中に案内し、そこで阿字観体験をやったりする仕事は面白かったです。今、高野山は森林セラピーでも有名ですが、それの外国人向けみたいな感じのものをやっていました。

金剛峯寺勤務時代の最後の方には海外出張が多くなり、しかも一度行くと2週間ほど滞在する長期出張が頻繁にありました。

米国ワシントン州のシアトル高野山では、「高野山カフェ」などを開いて、現地の人達に写経や、阿字観体験をしてもらうなどのイベントの企画や運営にも多く携わりました。私がとても尊敬している非常に優れたお坊さんがいらっしゃり、その方が布教活動に尽力されていました。その人と一緒に働くことができたのはとても貴重な経験だったと思います。こうした出向されている僧侶の皆さんの懸命な活動のおかげで今ではシアトル高野山には80人が一度に瞑想できるような立派な道場も建っています。

 

帰郷~新野のまちづくりに積極的に関わる~

17年間高野山で過ごした後、ついに徳島に帰って来て平等寺の副住職になりました。そこからは自分の地元である新野町のまちづくりなど地域に関わった活動に力をいれています。

大学院時代に、高野山で国際密教学会が開かれたことがあります。テーマは「社会参画型仏教(Engaged Buddhism)」でした。それは大乗仏教としてごく当たり前のあるべき姿だと思っていましたが、自分の寺に帰ってきてみると、現状では地元の地域社会に参加して活動しているとは十分に言えないと思いました。そこで、地元のまちづくりグループに顔を出すようになり、地域や檀家さん皆さま達と一緒に何かをやりましょうと言い出すようになりました。そこから地元のために率先して色々やるようになり、新聞やラジオなど地元メディアにもよく取り上げて頂くようになりました。

自分がこれから守っていくお寺自体の改善にも着手しました。寺をどうしていこうかなと考えていた時に、お遍路さん達からトイレや納経所をきれいにして欲しいという声があったので、その要望に答えることにしました。もちろん一番大切な本堂もきれいにして、遥々お参りに来て下さるお遍路さん達をお迎えしようと思い、改築することにしました。以前は通常は一般公開していなかった御本尊も「隠す理由は特にない」と思い、加えてせっかく美しいお姿していらっしゃり状態も良い御本尊でしたので、厨子からお出ししていつでも見える状態で本堂にいて頂くことにしました。

平等寺の境内の中では、どこでも何でも写真を撮って下さって構いません。カメラを向けただけで汚れたり、不敬だと思われるほどヤワな仏様たちではないと思います。

 

外国人お遍路さんのためのサービス充実

高野山から帰って来てまず驚いたのは、子供の頃には全くと言う程見なかった外国人お遍路さんが突然増えていたことです。

遠い国からわざわざやって来て下さる彼らのためにまず最初にしようと思ったのが、フリーWi-Fiの設置です。金剛峯寺勤務時代に海外出張に行った際、Wi-Fiやインターネット接続が無くて本山と連絡が取れずに困ったことが何度もありました。外国人お遍路さん達は四国を回っている間、Wi-Fiがない場所では通信手段がなくて大変だと思います。よしんば通信が可能な機器を持っていたとしても、利用には多額の料金が余計にかかっているはずなので気の毒だと思ったのです。私自身がその苦労がわかるので、とにかく最初にWi-Fi設置をやってあげたかったのです。今、平等寺境内の中のWi-Fi環境は非常に良く、納経所付近はもちろん上の本堂や隅の不動堂の辺りでも十分に通信できます。

あとは、納経所のスタッフがどこの国の方ともコミュニケーションできるように、ハンディ翻訳機も購入しました。50ヶ国語対応できるようです。

また、外国人お遍路さん達はテントを背負って野宿をしながらお四国を歩いて回られる人が多いです。朝にお隣の勝浦町から山を登って20番札所の鶴林寺にお参りし、山を下りて再び次の山を登って21番札所の太龍寺、そしてまたまた山を下りて、最後に少し低い山を越えるという「四国遍路第2の遍路ころがし」といわれる部分の終着点に当たる場所に平等寺はあります。ですから、この周辺で一日を終えて疲れを休めるお遍路さんが多いのです。野宿のお遍路さん達は、平等寺の境内でテントを貼って一晩過ごして頂いても構いません。仁王門を入ってすぐの鐘楼と大師堂の間に広く空いたスペースがありますので、納経所に一言声を掛けて頂けば、あとはご自由にテントを設置して下さい。トイレや水道もそばにあります。ただ、古い寺ですので火の気だけはとても注意しています。煮炊きやヒーターのご使用だけは、ご遠慮頂けるとありがたいです。

通常は朝6時から本堂で朝勤行をしています。平等寺境内に泊まっている方も、近隣の宿泊施設に泊まっていらっしゃる方も、どなたでもご自由に見に来て下さい。ご自由に本堂内に入って畳の上に座って頂いて大丈夫です。もちろん、写真やビデオの撮影もして頂いて構いません。

毎月8の付く日(8日、18日、28日)には午後3時から本堂で護摩もしています。だいたい1時間から2時間で終わります。こちらもご自由にご覧下さい。