DMVの世界初の実用化を計画!“あさてつ”がスゴい!

徳島県海陽町と高知県東洋町を結ぶ『阿佐海岸鉄道』。全長8.5km、停車駅は3駅、片道乗車時間は11分。風鈴列車やイルミネーション列車などの季節に応じたイベント列車を企画し、観光列車としても人気の “あさてつ”が、2020年を目標に鉄道と道路の両方を走る「DMV(デュアル・モード・ビークル)」の実用化を計画している。世界初となるこの取り組みについて、あさてつの魅力について、企画・情報発信担当の平道知代(ひらどうちよ)さんにお話を伺いました。


◎参考サイト 阿佐海岸鉄道 http://asatetu.com/

あさてつ、手作り感満載が逆にウケる!

確かあれは3~4年前のこと、徳島県南部で開催された食のイベントでした。

食べ物とは全く無縁のブース、賑やかな感じでブース前は親子、小さな子供さんは楽しげにニコニコ笑顔、ん?!電車ごっこ?(あ、徳島は電車ないから列車か)列車キットみたいなのに子供さんが乗っかってる、可愛い様子をスマホで撮影する親御さん。大人も子供も一瞬にして笑顔にさせる空間を作っていたのが阿佐海岸鉄道株式会社(通称あさてつ)のブース。

今回の取材で知ったのですが、列車キットの名は「段ボール列車」、取材対応してくださった平道さん手作りのものでした。

「スーパー(マーケット)で段ボールの空箱をもらってきて作ったんです、箱のサイズを計って。宍喰駅に置いてある、顔出しパネルも考えたんですが大きいし重くて(イベントに)持っていきにくいんで。デザインですか、Excelで作りました(アノExcelだけで超美しい風景画を描いたおじいちゃんみたいなのか!?そうなのか?内なる声)制作期間は1週間ぐらい、一つ一つ手作りなんです」ということで実物を見せてもらいました。


サイズは大中小。小さな子供さんはもちろんのこと親御さんや大きなお友達にも対応できるバリエーション全4種類。外側だけでなく内側は「あさてつ」名物のLEDイルミネーション仕様に。芸が細かいです!


前後左右フル車両ラッピングは当然のこととして、すだちくんや伊勢えび駅長デザインのヘッドマークも忠実に再現(Excelで!)。ナイロン製の肩掛け紐や補修で重ね貼りしたテープなど手作り感満載が逆にウケているそうです。


恥ずかしがる平道さんに観念してもらい、入庫していたASA‐301「たかちほ」(現在、あさてつの保有している車両は2両、もう一つのASA‐101「しおかぜ」と3日おきのローテーションで運行中)前で撮影。イベント時に活躍している運転士帽子もかぶってもらって。 

 

あさてつ、アイデアと行動力で発信し続ける!

元々、阿佐海岸鉄道株式会社が運営する線区(阿佐東線)は、国鉄時代の計画線でした。が、1980年に国鉄再建法により工事が凍結。それから8年経った1988年、第三セクター方式により会社設立。4年後の1992年開業しました。路線区間は徳島県海陽町と高知県東洋町を繋ぐ全長約8.5㎞。駅の数は海部駅、宍喰駅、甲浦駅の3つ(有人駅は宍喰駅のみ)。知る人ぞ知るスーパーローカル線は、ある問題を抱えています。開業以来ずっと続く赤字です。鉄道業界でしばしば登場する数値、営業係数。「100円の営業収入を得るための、いくら費用がかかっているか」を示す指標でいうと、阿佐海岸鉄道は100円稼ぐのに1224円必要としているのです(2013年度)。この数値は第三セクター鉄道で最も悪いものでした。

「メディアの方に『いつだったらお客さん乗ってますか?』と尋ねられたり、逆に無人の乗ってない時間がどれだけ続くか尋ねられたり。イベント時を除くと、3人乗っていたら多いほう、10人だったら『今日どしたん!?何があるん!?』という状態です。

私自身、地元海陽町なんですが、4年前に入社して初めてよく知りました。あさてつのこと、本当に知られてないのがもったいない。徳島県の人でも全く知らないんです。『阿佐東線?JRの区間なんちゃう?』みたいな印象で。こっちからどんどん言うていかな!“あさてつ”を知ってもらうために。外に向けて発信するため『どこでもいいんで出店させて下さい』と」。段ボール列車とあさてつグッズを持ってJR徳島運転所での鉄道まつりをはじめ香川や高知の鉄道イベントを含む1年に6回は町内外の催しに出張PRしています。


「ブースを出させてほしい」と各所にお願いしながらイベント出張場所を徐々に増やしてきたあさてつブース。宍喰駅以外であさてつグッズが手に入る貴重な機会です。


徳島県のマスコットキャラすだちくん、高知県東洋町のぽんかんくん、伊勢えび駅長のあさちゃん・てつちゃんのヘッドマークタイプのステッカー各100円(税込)。


人気の硬券切符セットこどもver・大人ver3枚セット、6枚セット。当初は切符だけで販売していたものを車両写真の台紙を手作業で用意したところ更に人気に。


伊勢えび駅長きっぷセットこどもver370円、大人ver720円(片道3枚入り)。

 

あさてつ、異色の有名駅長と企画列車と芸能人

“あさてつ”を多くの人に知ってもらうため外に出向いて発信しているのはその次のステップのためです。当然それは“あさてつ”に乗ってもらうためです。お花見列車、天の川列車など季節に合わせた定期便に加えて様々な臨時便も。例えば、時速30㎞のゆったり運行で地元パン屋さんの美味しいパンとドリンクで楽しむ“なごみ列車”や徳島住みます芸人さんとコラボした『すすめ!お笑い列車』、地元中学校音楽部の生徒さんによるクリスマスソング生演奏と子供さんにはお菓子の掴み取りプレゼントの「サンタ列車」など実施中。

「普段の定期便で行きたい時にちょっとでも乗ってみようかなと思ってもらえるように」と吊るし雛列車、お花見列車、こいのぼり列車、天の川列車、イルミネーション列車など次々と定期便の企画を打ち出しています。


そして、“あさてつ”には日本全国を見渡しても他に類をみない稀有な駅長さんがいます。宍喰駅の改札口前の水槽。駅長室のネームプレート。海老です。普通の海老じゃありません。伊勢海老です(ちなみに“あさてつ”では伊勢ぇびと表記しています)。

就任は2010年12月のこと。随分と長生きしてるなーと思ったら、今の駅長で三代目。ちなみに駅長はオス(てつちゃん)メス(あさちゃん)のペア2尾体制。

そもそもどうして伊勢海老が駅長かというと、海陽町の特産物だから。伊勢海老が成長際に脱皮するように、“あさてつ”も赤字から脱皮(脱出)出きますようにとの願いが込められています。

実はこの伊勢ぇび駅長さん、一昨年の2017年に一躍時の人ならぬ時のえびに! きっかけはテレビ朝日の『アメトーーク』。鉄道芸人の回で、元祖鉄道アイドルの木村裕子さんがお気に入りの鉄道として “あさてつ”をピックアップ。その時に紹介された伊勢ぇび駅長が番組MCの宮迫さんにハマり、Twitterでバズるなど話題に。と、現地に足を運べばなにかと楽しませてくれる“あさてつ”。

が、四国の片隅にある立地条件から行きたくともなかなか行けないという声も。そのような人にも対応しているのが2011年に発足した、あさてつファンクラブ。1口1000円で個人会員になると、1年間有効の会員証が発行され、記念乗車券(往復分)や限定グッズのプレゼント、年4回抽選で特産品プレゼントなどの特典が。遠いファンでは東京や新潟に在住の会員さんがいるそう。会員証を提示すれば協賛店で割引サービスがあり、宍喰駅がある海陽町の竹ケ島海中観光船ブルーマリンの乗船料1800円が会員証提示で1000円に!それも本人プラス同伴者1名まで割引対象というお得っぷり!!


海部駅近く上り牟岐・徳島方面にある山がないトンネル。昔は山があったそうですが周囲の開発に伴いトンネルだけが残ったそうです。


阿佐海岸鉄道HP(あさてつ、で検索すると出てきます)内にある伊勢ぇび駅長ブログ。度々水槽の清掃と海水の入れ替えの記事がアップされています。


厳かに就任式を行う二代目伊勢えび駅長(2015年に就任)。聞けば伊勢えびは15年前後生きられるそうですが、成長して大きくなると地元の海、水床湾に帰してあげてるそうだ。


夏休みに企画している親子を対象としたワクワク体感ツアーでは車庫前の線路をつかったレールスター体験や実際の車両を用いた洗車体験も。


華やかなイルミネーション列車に限らず地元テレビ局や新聞社で目にするあさてつの企画列車。プレスリリースをこまめに行いメディアを通じて1人でも多くの人に知ってもらうよう心掛けています。


阿佐東線の乗車、宍喰駅であさてつファンクラブに入会、またはあさてつグッズ500円以上購入すると、希望者に鉄カード(ただいま第4弾)を進呈中です。


あさてつ唯一の有人駅の宍喰駅(ちなみに徳島県最南端の駅です)。改札口横にある事務所で喜多さんと佐藤さん。こちらであさてつグッズを販売中です。


あさてつ乗車記念、鉄道発見伝、伊勢えび駅長各区間シリーズのスタンプも事務所横に設置。


ロケに訪れた芸能人サイン色紙がずらり。中でも目を引いたのが鉄道BIG4のひとり芸人ダーリンハニー吉川正洋さんの色紙。CS放送鉄道チャンネル「鉄道ひとり旅」でロケに来られた2014年12月のものです。

 

2020年を機に大変身、あさてつDMVへ

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年、あさてつが大きく変わります。これまで走行試験や実証運行を重ねてきたDMVがついに営業運行を開始するのです。

そもそもDMVとは?

Dual Mode Vehicle(デュアルモードビークル)の頭文字をとった名称で、鉄路と道路の両方を走れる新しい乗り物です。百聞は一見に如かず、なのでまずはこちらの写真をご覧ください。


こちらがDMV。見た目はバス。JR北海道の表記があるのは元々JR北海道が開発していた車両だから(レンタル中)。実際にマイクロバスをベースに線路を走れるように改造。前方部からレール用の車輪が出る仕組みです。


2020年から営業運行開始するDMVの導入台数は3台。今年1月にはデザインと愛称が発表されました。

阿佐海岸鉄道をはじめ徳島県南部エリアひいては高知県東洋町、室戸市の高知県東部へ地域振興の起爆剤として大いに期待されるDMV。今までにない世界初の新たな乗り物ということで鉄道ファンをはじめ全国の乗り物ファンへ向けてPRしています。現在、高知県東洋町の甲浦駅ではDMV導入するための準備工事が始まっているそうです。


ここで疑問が一つ。今、現役で走ってるASA‐101しおかぜ とASA‐301たかちほ の2台の車両はどうなるんだろう?? 一緒に走るのかと思いきや、なんとDMV導入後は、制約上DMVしか走れなくなるらしい。

つまり、DMV導入は今走る2台の車両の見納めに。

「鉄道ファンの間では賛否両論あって『世界初!注目してます』『絶対乗りに行きます』という声もあれば、『こんな邪道なのは鉄道じゃない』という声も」と平道さん。

確実なのは阿佐東線の線区をASA‐101とASA‐301の2台の車両が走る期間は既にカウントダウンが始まっているということ。乗り鉄、撮り鉄、車両鉄、音鉄の各鉄道ファンの皆さん、ぜひお急ぎを。鉄道車両と比較すると、サイズ的にかなり小さめなDMV。これまで行ってきた車内デコレーションやイベント等も変化は必至。また、宍喰駅で販売中の車両デザインのキーホルダーやポストカードはどうなる?段ボール列車デザインもリニューアル?とか、気になることだらけ。伊勢えび駅長が脱皮するように、来年2020年に向けて大きく変わろうとしている“あさてつ”。今後も伊勢えび駅長ブログ記事を追いかけていきたいと思います。

2019年3月9日(土)にDMV第1号のおひろめイベントが宍喰駅イベント広場で開催されます。モードチェンジの見学も!


軽快ディーゼル気動車ASA‐101「しおかぜ」。


軽快ディーゼル気動車ASA‐301「たかちほ」。


鉄道の日記念イベントで行われている子供鉄道ギャラリー、DMV版もぜひ見てみたい!