移住コーディネーター小林陽子さんによる現場エッセイ第二回。少しでも人口を増やしたいとはいえ、来るもの拒まず…とはいきません。どの人を受け入れたらいいか、上手な断り方のポイントもご参考ください。
アナタ何者
町でお婆ちゃんに呼び止められる。
「人がおらんようになるのは困る。都会からようけ来てもらわんとな。けどな、妙な人だけは入れんといて、頼むでよ」
了解、気つけます。見極めないと迷惑かける。妙な人来た途端、噂が流れ、誰も家を貸さなくなる。
移住希望の方とは、移住フェアで会ったり、本人から役場へ電話かメールがくる。
聞き取れる範囲で調べてもらう。
お名前は?お住まいは?ご家族は?
もっと踏み込み相手の状況聞きたいときは担当から引き継ぐ。
男性から移住したいと役場に電話。姓と電話番号聞き、家族構成は夫婦と大きな子供が二人。
役場担当から引き継ぎ電話する。
「初めまして、お幾つですか」
夫六十五才、
「お仕事されてますか」
定年退職後働いてない。
「奥様は」
妻四十四才、二十一才の年齢差、
「お子さまはお幾つですか」
十八才と十六才、
「お勤めですか、学校ですか」
二人とも自宅。
「どんな家がご希望ですか」
近所無く、大型犬が飼え、自給自足できる田畑付き希望。
どうする、物件はある。
四人も移住してくれる、こんな嬉しいことは無い。
けど…。
推察と妄想が駆けめぐる。四人どうやって食べていくの。
担当と相談後、再連絡。
「履歴書出して頂けますか」
電話、かかってこなくなった。
いきなり男性が役場に来た。
「直接、いらっしゃったんですけど会って下さい」
役場担当から電話。男性独り、車で空き家無いかと各町を訪ねてる、元警察官。
お目にかかることに。
履歴書、免許書、身元を証明する書類、ズラリと並べ、金はある心配無い大丈夫を連発。
大丈夫かどうか決めるのはコッチでしょ。こういう方には遠慮無し、尋問を開始する。元警察官、尋問に対し、
「取り調べ受けてるみたいや」
持ち家という住所、グーグルマップで見たら駐車場。
結果、
「申し訳ありません。いま物件がありません。出ましたら連絡させていただきます」
嘘つく相手に連絡など、する訳がない。
見極めに基準など無し。
▲2015年12月18日(金)大阪ふるさと暮らし情報センターで行われた移住相談会の様子。占い師か、尋問かというくらい、短時間で相手の希望を聞き出すので、終わる頃は全員ヘトヘトです。