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自分資源と地域資源を組み合わせて 塩見直紀氏講演レポート

2015年7月29日に美波町コミュニティホールで行われた塩見直紀さんの講演レポートを紹介します。

講師プロフィール
塩見 直紀(しおみ なおき)
半農半X研究所代表。 1965年4月、京都府綾部市生まれ。 現在、京都府綾部市在住。大学卒業後、カタログ通販会社「フェリシモ」 入社(1989年4月~1999年1月までの約10年在籍) 1999年1月末、33歳を機に綾部へUターン。 2000年4月、「半農半X研究所」を設立。屋久島在住の作家・翻訳家・星川淳さんのライフスタイル「半農半 著」にインスパイアされ、30歳になる1995年ころから21世紀の生き方、暮らし方として、「半農半 X」というコンセプトを提唱している。 2010年より、同志社大学院総合政策科学研究科の「オーガニック生活・社会デザイン論」嘱託講師(秋学期)。 2012年より、総務省「地域人材ネット」(データベース)に登録される。 総務省地域力創造アドバイザー」就任(現在も継続)
http://www.towanoe.jp/

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はじめに

京都府の綾部市という田舎町からやってきました塩見直紀といいます。我が家から一番近い信号まで3Kmですので、みなさんのところといい勝負ではないかと思います。今日は次のような内容をお話させていただく予定です。

・この時代をどう生きたらいいか

・Xの見つけ方

・みんなのXをいかしたまちづくり、国づくり

・世界が半農半Xをした先にある未来

講演の主旨が「ナリワイづくりをしながら地域づくりをする」なので、そのヒントを少しでもお伝えできればと考えています。

私が大変好きな言葉に「世界を変える魔法は『組み合わせ』の中にこそある」という脳科学者・茂木健一郎さんの言葉があります。

世界は今、選択肢が減っているそうです。経済面でも打てる手がだんだん減っている…こんな悲しいことはないと思うんですが、そんな時代に希望はどこにあるかというと、今日、みなさんが徳島のあちこちから集まっていただいていることこそ、希望だと感じています。

私は大げさな人間なので、「宇宙始まって以来の集まり」が「今日」であって、このメンバーの中で「新しい何かが生まれる」、そんな風に思っています。

人と人の組み合わせも意外性のある方がいいと言われますが、アイデアもかけ離れたものを組み合わせた方がいいと言われています。田んぼと畑を組み合わせるのではなく、福祉と農、デザインと農といったものの方がインパクトがある。

最近知った言葉に「地図を示せば仲間が増える」というのがあります。半農半Xも地図だと思いますし、どんな地図を示していくかで、集まるメンバーも変わり、いい地図であれば仲間も増えていくんじゃないかと思います。

後半のパネルディスカッションにも参加させていただきますので、ここに集まった方たちとの出会いが生み出すアイデアを大変楽しみにしております。

 

我々は何をこの世に遺して逝こうか。金か、事業か、思想か。

もう20年も前なんですが、私が28歳の頃、こんな言葉に影響をうけました。

明治20年代の内村鑑三さんというキリスト教の思想家が残した言葉で、「我々は何をこの世に遺して逝こうか。金か事業か、思想か」。

これは内村さんが33歳のときの言葉で、私は28歳の時にこの言葉に出会って、「33歳になったら人生を再出発しよう」と決め、10年勤めた会社を33歳のときに辞め、故郷の綾部に帰りました。

起業されている方なら「事業」を、教育者なら「人材」を、農業をされている方なら「土」や「産物」とか、料理をされている人ならレシピ本とか、遺すものはいろいろあると思うんですが、「金」、「事業」、「思想」、この3つの中から私があえて遺すものを1つ選ぶとしたら、「思想」だと当時、思いました。

ナリワイづくりも「思想」が必要ですし、まちづくりにも「思想」「哲学」が必要です。

有名なIT企業家の方がインタビューで「お金を出してでも欲しいものはなんですか?」と、尋ねられたところ、「新しい思想が欲しい」と答えていました。

いま世界は新しい「思想」を常に求めているのだと私は思っています。

 

半農半X誕生の背景

半農半Xはよく「スローライフですか?」と聞かれるんですが、ライフスタイルでもあるし、思想でもあるし、生き方の哲学でもあります。「どうしたら世界が幸せになるか」を追い求めるソーシャルデザインでもあります。半農半Xは生きるべき方向性を示すものです。

半農半Xが生まれた背景には「2大問題」があります。

ひとつは環境問題。

私が大学を卒業したのは平成元年。ちょうどバブル期の頂点の頃です。

世の中は「もう一つマンションを買おうか」というような時代でしたが、当時から若い世代は環境問題、年金問題的にも“赤字世代”と言われていたので、「これからは生き方、暮らし方、働き方を考えないとマズいな」という思いがありました。

ではどうしたらいいのか?

環境問題について、勉強する中でたどり着いたのが「半農」という考え方でした。

当時は専業農家になるには「貯金2000万円が必要」と噂されていました。私自身、専業農家になる勇気がなかったというのもあるんですが、自分は鍬も持たず、農水省や国に文句を言うだけ…というのではなく、「農ゼロ」でもなく、「半農」というカタチでも当事者になる選択をしました。

帰国子女なら「半農半英語」、パソコンのプログラムが得意だったのなら「半農半プログラム」という生活もあったと思いますが、私は何の特技もありませんでした。それでも「きっとなにかをもっているんじゃないか」、「Xという未知なる何かがあるんじゃないか」という思いで、“半農半X”という言葉が誕生しました。30歳を目前にしたころのことです。

 

半農半Xの定義

「半農半Xは兼業農家と、どう違うんですか?」という質問も、よく受けます。そんなとき、このように答えています。

・農地の面積(耕作面積)は関係ない

・一日4時間、農に費やさなくてもいい

・冬は休んでもいい

・農とは野菜や米だけではなく、一輪挿しや和菓子なども意味したい

・半農の場所は田舎でも、NYでも上海、東京23区、どこでもいい

Xは得意なことや生きがい、ライフワーク、天職、使命を指すんですが、フルタイムで頑張ってもいいし、週末の少年サッカーの指導でもかまいません。

「Xが見つからない」という人もいるかも知れませんが、自分のXだけにこだわらず、周囲のXを応援するのもOKです。

我が家は小農で、一反あれば家族が食べる分は賄えますので、残りの二反は半農半Xをしたい人のために市民農園的に自給プロジェクトとして活用しています。

オーナー制という考え方ではなく、プロジェクトと考え、「一緒に少しでも自給をしよう」と呼びかけています。

残りの三反は新規就農の方に5000円とか1万円以下でお貸ししています。田植えは手植え、手での草取り、手刈り&天日干しをしています。

プロジェクトにはいろんな方が来てくださいますが、基本は子育て世帯の方に来ていただき、生きる力や半農半Xの暮らしのヒントを見つけてもらえたらいいなと思います。

 

アジアに広がる半農半X 

日経新聞に半農半Xが大きく取り上げられたことで、2003年に『半農半Xという生き方』(ソニー・マガジンズ)を出版することができました。本により、いろんな人が「自分のXってなんだろう?」「農業って大事だな」と気づいてくれるきっかけになったのではないかと思っています。

こちらから依頼したわけではないんですが、台湾の20代の若い女性がこの本を現地の出版社に持ち込んだことで、2006年に台湾で中国語版が出版されました。それがまた中国大陸に渡り、いまでは中国でも『半農半Xという生き方』が読まれています。

読者は富裕層や環境意識や社会起業など志の高い方が多いようです。本を読んで私に会い来られた人は事業を経営しているけれど、新たに上海で市民農園の事業を始めましたという方でした。

東アジアを意識し、半農半Xなローカルビジネス、スモールビジネスをやることもできるのではないかと思っています。

 

場所を決めてスタートを切る

半農半Xコンセプトが20年も続いているのには、人間が生きるために必要な2つの問題が示されているからだと思います。

ひとつは「人は何かを食べないと死んでしまう」という生命の根本的な問題、もうひとつは「人には何か生きる意味が必要」という哲学的な問題です。

この“生きる意味”というのが大変大きなウエイトをしめていて、生きる意味について若い人は今、とても悩んでいます。

私は毎月東京で講演させていただいているんですが、その中には自分自身がこれからどこで生きていくのか、その“場所”が決まっていない人がたくさんいます。北海道に行くか、沖縄に行こうか、新潟に行こうか…。東京にはそんな行き先の決まらない人(若者)が多いな、と実感しています。

 

とにかく、1万時間やってみる

もうひとつ、講演会で若い人にお話するのは、場所を決めたら、とにかく1万時間、頑張ってみて欲しいということです。

1万時間というのはプロとして仕事ができるようになるための最低時間だそうです。

1日8時間として、約3年頑張ればプロの端くれになれるわけです。今は何もできなくても、半農半XのXは3年がんばれば、作ることができる。1日1時間だと27年かかりますが、1日30分なら50年。50年先の未来は見えない時代ですが、未来の自分のために今、何かを始め、続ける必要があると思います。

 

自分資源×地域資源 AtoZで「見える化」する

いまの時代、若い人が生きていくのに難しいな、大変だなと思うのは、いまは「何をやってもいい」という時代ではなく、山積するたくさんの課題を解決しつつ、食べていかないといけないという点です。

いま、私は綾部で、綾部ローカルビジネスデザイン研究所というプロジェクトを今春から始めています。綾部市には196の自治会がありまして、私はこのすべてを2年間かけて歩いて、綾部の地域支援調査を行います。なぜそんなことをするかというと、地域で埋もれているもの、まだまだ世に出ていないものはたくさんあって、それを「見える化」したいと思って始めたのです。

「何をしていいのか、わからない」という人や「自分たちの地域の魅力をどう活用していけばいいだろう」という人は、AtoZのキーワード出しをやってみてください。

自分の強みや地域の魅力をアルファベットのA~Zにあてはめ、棚卸をやってみてください。

自分のAtoZ、家族のAtoZ、地域のAtoZなどを掛け合わせると、思いもよらないアイデアが誕生するのではないかと思っています。

企業時代の私は同期生や先輩に芸大出身の人が多く、平凡な私はどうしたらアイデアが出せるのか、すごく悩みました。いろんな本を読んだんですが、辿り着いたのは「アイデアは既存のものの組み合わせ」というシンプルな答えでした。

これからの時代、誰であっても企画力が必要になってくると思います。

私は死ぬまでアイデアが出せる人でありたいと思っていますし、半農半社会企業家として、社会の問題をビジネス手法で解決していきたいと思っています。このAtoZは新しいアイデアが生まれる、とても使えるおススメの手法です。

 

半農半Xの次なるコンセプト

 

何年前だったでしょうか、うちの奥さんが私に「半農半Xの次のコンセプト、ちゃんと考えている?」と聞かれたことがあります。「半農半Xが当たり前の時代が来たら、あなたは何で食べていくんですか?」ということです。

次の私のキーワードは「1人1研究所」です。私はいつかこれが国家の政策になるだろうと思っています。それほどこのコンセプトは「なかなかいけるな」と思っています。

私は成長戦略において、市民の潜在能力発揮というのが一番大事だと考えていて、「1人1研究所」は幼稚園でも小学生でも始められます。例えば、オオクワガタ研究所とかです。仏像を研究している小学生もいる時代です。各自が生涯、自身のテーマを研究して、最後はPPK(ぴんぴんころり)と大往生する。これが私の願う社会ビジョンです。

自分の趣味である写真をご覧に入れて大変申し訳ないんですが、今日、徳島へ来る途中も淡路島で車を止めていくつか撮影してきたんですが、半農半Xを20年も追い求めていると、いろんなものがクロスしてXに見えてしまい、“X写真”を撮影しています。

今、1700枚くらい撮っておりまして、1万枚を目標に10年くらいかけてやっていこうと思っています。

それだけやれば“X写真”の第一人者になるかもしれないし、現代アートとして認められ、NYの美術館が「展示させて欲しい」と依頼してくるかもしれない。

なぜこんなことをしているかというと、ナリワイづくりのためには感性(センス・オブ・ワンダー=自然の神秘さや不思議さに目をみはる感性)を磨くことが重要だと思っていて、センス・オブ・ワンダーさえあれば、死ぬまで仕事を作っていけるのでないかと思っています。

 

おわりに

起承転結の「起」は「己が走る」と書きます。

困難な時代ではありますが、誰かのせいにするんじゃなくて、自分から走り出す人になって欲しいと思っています。大変な分、楽しい時代でもあると考えて、自分の資源を棚卸し、地域資源を駆け回って探して、新しい組み合わせを創っていってくれたらと思います。

ご清聴、ありがとうございました。

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徳島阿波おどり空港にて那賀町の展示、開催中

阿波おどり空港2Fで那賀町の特産品や文化・伝統、現在の取り組みを紹介するロビー展示が行われいます(11月2日~11月27日まで)。

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徳島県の南部に位置する那賀町(なかちょう)で、今、注目されている取り組みのひとつがドローンを使ったまちおこしではないでしょうか?

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これ、今年4月に地域おこし協力隊として四季美谷温泉に勤務する喜多幸治さんの発案。相次ぐ墜落事故で、よくも悪くも世間に知れ渡ったドローンですが、そうなる前から、ずっとドローンの可能性について考えを巡らせていました。徳島版ドローン特区として、いよいよ本格始動。

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そして那賀PRフロアでなんと言っても目立ってるのが、黄色と緑が鮮やかな柚子ピラミッド!

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ドローンを使って柚子ピラミッドを空撮!したのではなく上から撮っただけ^o^

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展示期間中、那賀町の鹿肉を使った鹿コロッケ(480円)や鹿丼定食(980円)も3階のカフェ『リッチ・バーガー・ファクトリー』にて、特別に味わうことができます。

太布織やミツマタなど、那賀町の文化や伝統を知るきっかけとなる展示もあり、柚子を使った特産品の展示もあります。

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11月17日(火)からは1Fロビーで同町の写真展も始まるので、ぜひご覧ください。