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日本のお山に帰りたい~岩本さんが加茂谷で協力隊になるまでの話④~

この話は、阿南市加茂谷の地域おこし協力隊・岩本昌子さんが、なぜ、徳島に来たのかを本人が綴ったエッセイです。

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第四回 そうだ、四国があるじゃないか。

大根ぐらい、すぐ近くのスーパーで気軽に買える生活が欲しくなった。

もともと不動産も車も持たない独身者の賃貸住まい。国を離れるに当たってややこしい手続きもない。急速に帰国準備をすすめる2015年の夏、なぜかテーブルの上には写経用紙と筆ペンがあり、私は毎日コツコツと般若心経の写経に勤しんでいた。

四国遍路の準備だった。

日本に帰ったら、思いっきり長い「歩き旅」をする。その突発的考えが出たのが正確にはいつだったか覚えていない。

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ただ、その年の初め頃、私は趣味のダンスのやり過ぎで膝を痛めた。膝を痛めたのはもう何度もあるのだが、この時は特に酷かった。ある朝突然膝から下に力が入らず、まともに歩けなくなったのだ。

幸い深刻な損傷ではなかったので、数ヶ月膝を休めれば良かった。徐々に普通に歩けるようにもなってきた。

 

ただ、この時人生初めて、普通に歩けることがどれ程素晴らしいことかがわかったのだ。

 

そしてこの後の人生、いつ何時でもまたその「当たり前に歩けること」が当たり前でなくなってしまうことはあり得るのだ。人生40年の折り返し地点を曲がり、あとはひたすら老化するのが自然の摂理なのだから。

「歩きたい。思いっきり歩きたい」歩ける人間が歩ける時に歩かないでどうする。日本のお山に帰ろう、お山の中を思いっきり歩こう。何日も歩き続けよう。

 

当初、山々の中を歩き旅できるならどこでも良かったのだ。

ただ、陸上自衛隊出身と言ってもアウトドア派でもなくハイキングや登山が趣味であったこともなかったこれまで40有余年の人生。

日本国内で、とりあえず数週間以上自然の中を歩き続ける旅ができる場所と考えると片手で余る選択肢しか思い浮かばなかった。

 

中部地方の山々のあたり?

…全くの初心者がいきなり3千メートル級の高山に挑むのを、無謀と言う。ザイルやらテントやらがいるようなことは手を出さない方が良い。

広い言えば北海道?

…自衛隊時代に5年住んだことがあるので、わかっている。北海道は歩いて回るような場所ではない。町と町の間隔が半端なく離れている。途中で行き倒れたら本当にヤバい。しかもあの北の地にはヒグマがいる。出会うとまじめにヤバい事態になる。

 

そうだ、四国があるじゃないか。